【写真特集】出口を失った「鳥籠」のイラン
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月11日 18時20分
<政治的、宗教的な迫害から逃れようとイランの人々の頭には今、欧米移住の考えがよぎるが>
イランは「鳥籠」のように息苦しい国だ。イスラム教に基づいた風紀粛正と家族重視で、生活はいつもがんじがらめ。一方で経済は悪化し、失業率増加で社会は不安定化している。
民衆は、かつて改革姿勢に期待をかけたハサン・ロウハニ大統領に失望している。2015年の核合意で経済制裁が解除されると、国民は生活向上に希望を寄せた。だが実際は大学を出ても仕事すらなく、白タクの運転手でしのぐありさま。昨年末から今年初め、不満を募らせた人々の反政府デモが全国に拡大すると、ロウハニは弾圧に回った。
政治的・宗教的迫害から逃れようと、老若男女の頭に欧米移住がよぎる。それでも出国をためらうのは、嫌いなはずの「鳥籠」が離れてみると恋しくなるのを知っているからだ。
とはいえ将来への不安から、毎年多くの若者が留学する。その数は増加しており、外国で学ぶ留学生は2008年の2万7000人足らずから、2014年には4万8000人となった。イランは女子の就学率が高く、大学生数は女性が男性を上回っている。
そんなイランの若者たちをますます苦しめるのが、ドナルド・トランプ米大統領だ。核合意が破棄されれば、制裁再開でイラン経済は行き詰まる。若者は「鳥籠」への愛着と、厳しい現実の間で揺れている。
青い鳥が描かれた首都中心部の民家
風紀警察の取り締まりが緩やかな文化施設が集まるホナルマンダン公園はカップルの憩いの場に
会社の管理職の心得と経営戦略を学ぶ女性たち
オーストラリア留学を目指して英単語を暗唱するマフタ(32)は男性に依存するよりも独身でいたいと言う
タクシーで通学する少年たち。教育はイラン人の最大の関心事で子供自身よりも親の意向が重視される
早朝のハフテティル広場を行く通行人
09年の反政府抗議「グリーン革命」の中心地の1つとなったハフテティル広場
イラン最大のベヘシュテザフラー墓地に国威発揚のために置かれた戦車
「バラの宮殿」と呼ばれる世界遺産ゴレスタン宮殿で工事を行う労働者
革命の最高指導者ルホラ・ホメイニ師を祭った霊廟は籠のような格子に覆われている
丈が長い白服に黒いコートを羽織りターバンを巻いたムラー(宗教指導者)は「アホンド(坊さん)」と呼ばれ市民からひそかに侮蔑されることも
マスード(仮名)はグリーン革命で弾圧された「戦場」の記憶に苦しむ
<撮影:エミン・アクババ>
1987年、ドイツ生まれのトルコ人フォトグラファー。デンマークの大学でメディアとジャーナリズムを学ぶ。特に中東における女性の権利、男女同権、言論の自由をテーマに作品を発表している
Photographs by Emine Akbaba
<本誌2018年5月1&8日号掲載>
Photographs by EMINE AKBABA
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