トランプ「独自外交」の怖さはここにある
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月14日 19時0分
また、89年にはベルリンの壁崩壊を受け、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が東西ドイツの統一を支持すべきかどうかの決断を迫られた。
ドイツが先の2つの大戦を引き起こした記憶がまだ鮮明だった欧州の同盟諸国は、統一に激しく反対した。ソ連のミハイル・ゴルバチョフ大統領も同じだった。アメリカの新聞は統一を警戒する社説を掲載した。
だがブッシュの考え通り、東西ドイツは統一された。そしてNATOに加盟し、今や欧州の民主諸国のリーダーだ。
大統領による外交政策の転換の背後にはさまざまな理由がある。
トルーマンは国際的な危機への対処として政策転換を選んだ。カーターは自らを、世界におけるアメリカの役割を変えるために選ばれた「門外漢」だと捉えていた。ブッシュ父は冷戦に終止符を打とうと考えた。また、中心的な支持層にアピールするために政策転換を行うケースもある。
失敗がさらなる失敗を呼ぶ2つのパターン
トランプの政策転換もたぶん、そうした要因がいくつも絡み合っているのだろう。
動機が何であれ、現時点で何より重要なのは、トランプの政策が失敗した場合に何が起きるかということだ。
間違った対応をすれば危険を招きかねないことは歴史が証明している。
79年のイランで起きたアメリカ大使館人質事件がいい例だ。解放に向けた外交交渉は失敗に終わった。当時のカーター大統領は、かなりの犠牲が出かねないにも関わらず、いくつかの選択肢の中から救出作戦 を選んだ。失敗や損失を経験すると、人はそれを取り返そうとして大きなリスクを冒しがちだということはよく知られているが、これはまさにその好例と言えるだろう。
結局、人質救出作戦は失敗に終わった。作戦では2機の軍用機が空中衝突し、8人が死亡、4人が重傷を負った。
イラク戦争中のジョージ・W・ブッシュ大統領の対応は、別のタイプの危険行動 に当てはまる。当初の案がうまく行っていない場合、人は方針転換するか、それともリスクを恐れず同じ道を進むかの決断を迫られる。たとえ状況が悪くても、方針を変えずに深入りすることを選ぶ人は多い。
2006年の時点で、イラク戦争におけるアメリカの旗色は悪くなっていた。世論調査では57%がブッシュを支持しないと答え、イラクからの米軍撤退を求める人もほぼ同じ割合に上った。
ブッシュの軍事顧問たちはイラク駐留米軍の規模を縮小し、戦闘はイラク政府軍に任せることを進言した。だが06年、ブッシュは戦闘部隊を増派。多少の成果は上がったが、戦争終結には遠く至らなかった。
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