トランプ「独自外交」の怖さはここにある
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月14日 19時0分
私の考えでは、大統領がこうした危険な意志決定行動を回避するのに役に立つ2つの要素がある。
1つ目は強力で独立心の強い顧問たちだ。例えばキューバ危機において、ジョン・F・ケネディ大統領は厳しい決断を迫られた。空爆に踏み切るべきか、キューバに侵攻すべきか、それとも封鎖を選ぶべきか――。
10人を超えるケネディの顧問たちは、それぞれの案のいい点と悪い点について精力的に議論した。批判し、問いを投げかけ、忌憚のない考えを述べることに前向きだった彼らの姿勢が、アメリカを核戦争から救ったと言える。
だがトランプはと言えば、顧問たちに率直な意見より忠誠心を求めることで知られている。トランプの決断に疑問を投げかけたりすれば、地位を失いかねない。
自分で冷静な分析ができればいいが
大統領本人の柔軟な対応も危険回避には役に立つ。
例えば1983年、当時のレーガン大統領は米海兵隊を、内戦が激化するレバノンの国際平和維持活動に送り込んだ。中立国の軍隊が駐留すれば秩序は回復できるはずだというのが当初のレーガンの考えだった。
だが実際には、米海兵隊は格好の標的になってしまった。10月にはベイルートの海兵隊兵舎が自爆テロに襲われ、実に200人以上が死亡した。これを受けてレーガンは状況分析をやり直し、撤退という結論に達したのだ。
イラン核合意からの離脱をめぐるトランプの決断はこれとは対照的だ。外部の状況が彼の当初の損得勘定と矛盾していても政策を修正する意志などうかがえない。
核合意からの離脱を表明した際、トランプはイギリスやドイツなど他の国々もアメリカに追随し、イランへの再制裁に参加すると見込んでいた。
だが欧州諸国はトランプ案に強く反発。制裁に加わる気はないとはっきり表明した。それでもトランプは既定の路線を突き進む構えだ。
アメリカ大統領の歴史をひもとけば、今のようなホワイトハウスの姿勢が危険なのは明らかだ。トランプ大統領の政策の一部が失敗に終わるのは避けがたい。失地挽回のための試みが、さらにアメリカを危機の泥沼に叩き込む可能性もある。
(翻訳:村井裕美)
Charles Hermann, Senior Professor, and Brent Scowcroft Chair Emeritus, Bush School of Government & Public Service, Texas A&M University
This article was originally published on The Conversation. Read the original article.
チャールズ・ハーマン (テキサスA&M大学教授)
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