中国軍用ドローンが世界を制する日
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月2日 16時30分
とはいえ、新輸出政策がすぐに効果を発揮するとは考えにくい。SOFEXには米企業専用のパビリオンが用意されていたが、軍用を含むドローンを売り込んでいるのはジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ1社だけだった。
CH4がMQ1に似ているのは偶然ではない。欧米の有名ブランドによく似た製品をもっと安い価格で、そこそこの性能で作る――それが中国の技術開発の伝統的なやり方だ。明確な証拠はないが、中国はアメリカの技術情報を盗んでドローン開発を進めてきたと示唆するアナリストもいる。
中国の上客になっているのは、国内の反政府勢力との戦いにドローンを使いたい途上国だ。最近のイラクなど、テロ組織ISIS(自称イスラム国)掃討のために中国製品を購入した国々の実例は、中国に絶大な宣伝効果をもたらしている。
SOFEXでCH4を売り込んでいた航天長征国際貿易の展示エリアでは、イラク軍が公開したISIS攻撃の映像を引用した宣伝動画が流れていた。中国語の説明によると、イラク軍は既にCH4を使用したISISへの攻撃を少なくとも260回行い、命中精度は100%近いという。
途上国は中国製で十分?
中国は外国政府の完全な顧客リストを開示していないが、宣伝動画からアルジェリア、ナイジェリア、ヨルダン、ザンビア、イラク、サウジアラビア、エチオピア、トルクメニスタン、パキスタン、ミャンマー(ビルマ)が顧客だと分かる。
CH4の外観はMQ9に似ているが、性能まで同じではない。例えば、偵察衛星のデータとのリンク機能はない。そのため操作は目視に頼る必要があり、作戦の行動範囲や戦場での運用の自由度に制限がある(最新型のCH5〔彩虹5号〕は衛星リンクあり)。
航天長征国際貿易は営業には熱心だが、他者からの詮索には警戒を隠さない。会場にいた同社の代表は取材を断り、「政策アドバイザー」を名乗るアメリカ人との名刺交換を拒否した。
別の中国企業、深圳の軽准科技は、手榴弾を発射できる小型軍用ドローンをSOFEXで宣伝していた。重量35キロ、垂直離着陸が可能で、航続距離は8キロ、飛行時間は20分間だという。
このドローンの設計に4年かかったと、同社の薛堃(シュエ・クン)社長は話す。価格は地上の遠隔操作システムとセットで30万ドル。製品コンセプトは「トラック1台の空軍」だという。トラックの荷台に取り付けた特製キャリングケースに3機のドローンを載せられるからだ。「たくさん買ってもらえれば、値引きできる。現地生産も可能だ」と薛は言う。
この記事に関連するニュース
-
中国、米防衛企業3社に制裁 台湾への武器売却で
AFPBB News / 2024年5月20日 17時14分
-
「中国がドローン輸出などでウクライナ侵攻を支援」批判に中国反論
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月16日 18時58分
-
中国製ドローンの関税引き上げを提案、米下院の共和党議員
ロイター / 2024年5月16日 12時30分
-
「ドローン急襲」想定しない日本のヤバい防衛体制 「いずも」上空から撮影ができてしまう事情
東洋経済オンライン / 2024年5月15日 11時0分
-
一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月28日 13時0分
ランキング
-
1イラン大統領ら乗ったヘリが山中に不時着、安否不明…悪天候と濃霧で救助隊が現場到着できず
読売新聞 / 2024年5月20日 0時5分
-
2インドネシア 小型機が市街地に墜落 搭乗の3人死亡
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月20日 1時13分
-
3日本政府の態度「反文明的」 徴用工巡り、韓国前大統領
共同通信 / 2024年5月19日 18時56分
-
4アングル:「働いた証ない」、労働者の権利求めるメキシコのセックスワーカー
ロイター / 2024年5月20日 8時52分
-
5イラン大統領、事故で死亡=不時着ヘリ発見
時事通信 / 2024年5月20日 13時39分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください