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米朝「核合意」の必要十分条件とは

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月7日 15時45分

北朝鮮は、カダフィ政権が核開発を放棄したことがNATO軍の介入を招いたとの教訓を引き出し、カダフィ政権の二の舞いを避けるためにも核武装は必要と、自らの核開発を正当化している。ブッシュ政権がリビアと国交正常化したにもかかわらず、オバマ政権になって内戦に介入したため、北朝鮮はアメリカの政策の一貫性にも強い猜疑心を持っていると考えられる。

米朝首脳会談開催をめぐる迷走は、以上のような非核化と体制保証に対する考え方の違いに加えて、根深い相互不信も大きな原因である。

そもそも米朝間に信頼関係がないことに加えて、5月半ばからは不信感をあおる出来事が相次いだ。5月16日、米韓の合同軍事演習「マックス・サンダー」に反発した北朝鮮が態度を硬化させた。北朝鮮からすれば、3月に「例年どおり」の米韓合同演習の実施に理解を示したにもかかわらず、前年まで投入されてこなかった最新鋭のF22ステルス戦闘機と核搭載可能なB52戦略爆撃機が投入されることが米韓による挑発に見えたからだ(B52は実際には投入されなかった)。

一方の米側は、北朝鮮が「マックス・サンダー」に反発した背景に中国の存在を感じ取った。3月下旬の中朝首脳会談は事前にアメリカ側に知らされていたが、5月初めの中朝会談については知らされていなかったからだ。



対話継続のポイントは

北朝鮮は4月20日にICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験の停止と核実験の停止、そして北部の核実験場の閉鎖を発表し、5月24日には実際に海外メディアを招いて豊渓里(プンゲリ)の核実験場を爆破した。北朝鮮はこれらの措置についてもアメリカからの見返りを期待していたが、米側は応じなかった。

米側は実験場が既に使えない状態にあった可能性を指摘し、また当初実験場の閉鎖に報道陣に加えて専門家を招くとしていたにもかかわらず、実際には北朝鮮が専門家を招かず検証可能な形で行わなかったことに不信を強めた。

トランプが会談中止を発表したのは5月24日であったが、その数日前にシンガポールで予定されていた実務者協議に北朝鮮側が現れず、アメリカ側の不信感がさらに増し、会談の延期が検討されるようになっていた。

しかし、米朝とも首脳会談を行うことにはそれぞれ利益を見いだしている。アメリカにとっては、非核化に成功すれば大きな成果になるし、そうでなくても北朝鮮の真意を見定める機会となる。

筆者がトランプ政権関係者に取材したところによれば、トランプが会談をキャンセルしたのも、実際は会談を実現するための駆け引きの一環だったという。キャンセルを通告した結果、北朝鮮がどう出てくるかはいちかばちかのギャンブルであったというが、金正恩宛ての公開書簡にも、会談を実現したいとの強い意向が表れていた。

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