1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

海外で見た酷すぎるクールジャパンの実態~マレーシア編~

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月11日 14時30分




日本の漫画が陳列されている箇所は、総面積1万平方メートルの中にあって、わずかにこの柱の二面だけ。ちなみに花沢健吾先生のアイアムアヒーロー(翻訳版)は一巻のみ陳列されており、約3,000円でここから10%値引きのセール中 筆者撮影

【総評】クールジャパンの実態見たり~傲慢と無知が招いた世紀の失策~


お客の存在しない3F日本文化フロア 筆者撮影

南方の、日本人の余り行かない土地だと思って「クールジャパン」の美名の元、好き放題に血税が、何の費用対効果も考えず、ただただ垂れ流しされている実態を、殆どの日本人は知らない。私も、クアラルンプールのThe Japan Storeに実際に行ってみるまで、全く予期しない事実であった。

素晴らしい高品質の日本文化を海外に流布させる―。クールジャパンの基本戦略である。が、そのクールジャパン戦略の音頭を取る「官」が、日本人でありながら日本文化を全く理解せず、また市場経済も全く理解していない結果、このような酷い現実が出来したと言わざるを得ない。

その根底には、日本の文化や産品は世界一素晴らしく、幾ら高くとも現地人は買うに違いない、という傲慢と無知が存在するのでは無いか。日本の高付加価値商品は確かに、海外で高い評価を受けている。だがそれは、現地の市場の皮膚感覚に合致して初めて成功するものである。日本で数百円で売っているモノをマレーシアで数倍~数十倍の値段をつけても売れるに違いない、なぜならそれは高品質の日本産品だからである、という傲慢な自意識が、The Japan Storeの全てから漂ってくる。

そして本来、クールジャパンの中核であったはずの、日本の漫画やアニメなどの現代カルチャーに対する無理解と無知を克服しないまま、そして自国の現代文化に対する無知を放置したままの文化への無教養が背景にあるからこそ、日本文化と称して『アナ雪』や『スターウォーズ』を堂々と展示して憚らないのである。

経済成長著しいマレーシアには多くの日系企業が進出している。中でもユニクロは平日早朝から黒山の人だかりであり、同じく日系のファミリーマートは現地の人々の経済感覚に沿った、低価格の日本流おにぎりやおでんを展開して極めて盛況である。市場経済から遊離した、似非社会主義ともいえる計画的観念の悪しき真骨頂こそが、ここクアラルンプールの一等地にあるThe Japan Storeである。

ちなみに、このThe Japan Storeのお隣(同じビル内)にある『H&M』は朝10時の開店から現地人が列をなす。しかしThe Japan Storeの開店時刻は、そもそも午前11時。人々は、The Japan Storeと同じ階にある中華フードコートで腹を満たす(一食300円程度の大衆店舗)が、決してThe Japan Storeには入ろうとしない。いやそもそも、開店時間が遅すぎるので、入りたくても客はシャットダウンされているのである。ここでも官製クールジャパンの居丈高な、市場経済無視の設計的発想が現れている。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください