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トランプの予測不可能な通商政策は世界もアメリカも貧しくする

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月18日 17時0分

だがトランプは発表の数週間後、突然歩み寄る姿勢を見せ、ツイッターに「(ZTEが)ビジネスに早く戻れるよう、中国の習近平国家主席とともに取り組んでいる」と投稿。「中国であまりに多くの仕事がなくなった。米商務省にはすでに(制裁緩和に向けた)指示をした」と書き込んだ。

そんな風に態度がころころ変われば、不確実性ばかりが増し、貿易は停滞する。

意思決定が困難に

世界中に輸出先を持つハイテク機器メーカーで働くアメリカ人ビジネスマンの立場になって考えてみよう。

そのメーカーの製品は原料に鉄鋼とアルミを使用しているため、トランプが追加関税を発動したことで、将来的な仕入れ価格の予測が困難になる。そうなれば当然、製品の価格設定にも影響する。顧客も安価な類似品に乗り換えるのか、そうでないかも分からない。

そうした不確実性は、会社全体に悪影響を及ぼす。

決して仮の話などでなく、企業はすでに警戒を強めている。米自動車大手フォード・モーターと北米トヨタはともに、鉄鋼とアルミへの追加関税で輸入コストが上昇し、アメリカでの健全な設備投資の判断に支障が出るとして不満を表明した。

「追加関税は違法」

トランプが発動した鉄鋼とアルミへの追加関税は、そもそも合法的なのか、と疑問視する声も広がっている。

アンゲラ・メルケル独首相とエマニュエル・マクロン仏大統領はそろって、今回の追加関税は違法だと断言した。EUも同調し、アメリカを相手取ってWTOに提訴した。安全保障を理由にした輸入制限だというアメリカの主張をWTOの判事が認めるかどうかは不透明だ。

G7閉幕後、カナダのジャスティン・トルドー首相は、カナダがアメリカにとって安全保障上の脅威になり得るなどというのは侮辱だ、発言した。ジェームズ・マティス米国防長官でさえ、安全保障は輸入制限の口実として説得力はないと苦言を呈したと伝えられている。

その険悪な雰囲気からは、アメリカの長年の友好国ですら、トランプ政権による最近の措置は違法であり、そうした交渉姿勢は理解不能でお手上げだ、と考えているのが見て取れる。

重要な教訓

そもそもアメリカが世界一豊かで強い国なのは、現在のルールに基づく自由貿易体制を重視してきたからだ。

トランプの通商政策は、アメリカの長年の成功体験の上に積み上げるどころか、大混乱を起こしている。しかもそのやり方では何ら有利な条件を引き出せていない。

中国は6月16日、米国からの輸入500億ドル(約5兆5300億円)相当に追加関税を課すと発表した。トランプが6月15日に発表した同様の関税に対する報復措置だ。どちらも7月6日から新関税を適用するとしている。

貿易であれ得意の取引であれ、トランプは交渉の際、ルールをぶち破るのが好きなようだ。彼は学習すべきだ。アメリカを偉大にしたのは、そういうやり方ではなかったのだと。

(翻訳:河原里香)

Amitrajeet A. Batabyal, Arthur J. Gosnell Professor of Economics, Rochester Institute of Technology

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.


アミト・バタビャル(米ロチェスター工科大学教授)


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