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トランプの米朝蜜月戦略は対中牽制──金正恩は最強のカード

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月19日 10時51分

以上より、どんなに金正恩と習近平が熱い握手を交わしても、それはあくまでも互いに相手を利用しているだけであって、中朝友好は虚構であり取り敢えずの偽善あるいは手段でしかないことは歴然としている。

アメリカと肩を並べたい金正恩

金正恩が核実験やミサイル発射を続けていたのは、あくまでもアメリカを振り向かせ、アメリカと同等の立場で渡り合うためであった。だからアメリカに届くICBM(大陸間弾道ミサイル)を「完成」させたと宣言した時点で、対話路線に転換し、平昌冬季五輪を利用して、アメリカを対話路線へと誘い込んだ。少なくともそのことに関しては、金正恩は成功したと言っていいだろう。



特に6月5日付のコラム<北が米朝蜜月を狙う理由――投資競争はすでに始まっている>に書いたように、金正恩の特使として訪米しトランプと会談した金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長はトランプに、「金正恩が目玉としている元山(ウォンサン)観光地のカジノ事業」などへの投資を要請している。元山は金日成が旧ソ連から落下傘部隊として朝鮮半島入りした時に上陸した港だ。金正恩肝いりの観光事業区である。この、最も力を入れている観光事業区は、アメリカと協力しながら開発していくつもりだ。トランプがカジノ好きだということも計算済みだろう。

金正恩にとって米朝蜜月となるのは、いくつものメリットがある。

まず第一に「体制の保証」という防衛面から考えると、米朝蜜月は最も安全だ。武力攻撃を受けない。

二つ目は、アメリカと肩を並べることによって、中国を見下すことができる。あの「千年の宿敵」である中国を、習近平と握手してアメリカを牽制しながら、その結果招いた米朝蜜月によって、「自分の下に置くことができる」のである。これほど痛快なことはない。

三つ目は、中国(とロシア)が、北朝鮮をアメリカに取られまいとして、必死で北朝鮮に投資するだろうという計算だ。

トランプにとって金正恩は最強の対中牽制カード

一方、トランプにとっては、金正恩と親密になることは最強の対中牽制カードとなる。

トランプは、「真の敵は中国」であることを知っている。

特に昨年末からランディ・シュライバー氏をアジア・太平洋の安全保障問題を担う国防次官補に指名する辺りからトランプ政権の対中強硬策は始まっていた。

今年1月に発表された「国家防衛戦略」では中国とロシアを「戦略的競合相手」と位置付け、それまでの米中新蜜月から戦略転換をしている。3月には米議会で「台湾旅行法」が成立し、「あらゆるレベルのアメリカ当局者が台湾へと渡航し会談すること、および台湾高官が米国に入国し、アメリカ合衆国国務省および国防総省の職員を含むアメリカ当局者と会うことを認め促す」内容となっている。

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