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トランプの米朝蜜月戦略は対中牽制──金正恩は最強のカード

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月19日 10時51分

なんなら、トランプさえも、訪台しようと思えばできるようになったのである。

実行に移せば、中国が死守する「一つの中国」論をなし崩しにしかねない。

これ以上の「対中強硬策」があるだろうか!



ランディはProject 2049 というシンクタンクのCEOで、2016年9月に筆者はランディの招聘により、ワシントンD.C.で彼が開催したカンファレンスで拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関して講演をした。彼は「中国共産党こそが歴史を捏造している」と主張しており、その中国がアメリカと覇権を争おうとしていることを強く警戒している。トランプ政権では最大の中国通だ。だから彼ならば、中朝関係の真相をトランプに知らせている可能性が大きい。 

5月20日のコラム<「北の急変は中国の影響」なのか?――トランプ発言を検証する(前編)>と5月21日付けコラム<「北の急変は中国の影響」なのか?――トランプ発言を検証する(後編)>で、かなりしつこく分析したように、トランプが金正恩の態度の急変を「中国のせい」にしたのは、金正恩に「習近平との蜜月を見せつけて俺とディール(取引)しようとしてもそうはいかないぞ!」と、中朝離間を図ったからなのである。

このときほぼ同時に(5月23日)米国防総省は、6月からハワイ沖で実施する環太平洋合同演習「リムパック2018」に中国海軍を招待しないと発表している。

米朝首脳会談後の6月15日には、トランプ政権が中国からの輸入品に高い関税を課す制裁を発動した。

「中国は北朝鮮の後ろ盾」という既成概念から脱すべき

このようにトランプは中国の存在を「経済的にも、軍事的にも」今後の最大の脅威と位置付けており、アメリカと肩を並べたがっている金正恩を最強のカードとして使い、対中牽制をしようとしていることが如実に見えてくる。

少なくともその意味では、トランプは正しいことをした。

トランプにとっての最大の敵は習近平であり、それは金正恩にとっても同じなのであることを見逃してはならない。

トランプと金正恩の蜜月は、二人にとって対中牽制となっている。

この事実を通してこそ、東北アジア情勢は必ず大きく動いていく。その神髄を見極めなければならない。

もし日本が今後もなお、「中国が後ろ盾になっている北朝鮮」あるいは「北朝鮮の後ろ盾である中国」という「慣用句」を使い続けるなら、中国をどれだけ利するか、そして情勢判断を見誤るか、そのことを肝に銘じるべきだ。

[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

≪この筆者の記事一覧はこちら≫



遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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