コロンビア大統領選に勝利、ドゥケは半世紀ぶりの和平を危険にさらす?
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月19日 18時29分
ドゥケは、ゲリラに対してより強い姿勢を取り、2016年に結ばれた和平合意を修正することを提案している。支持者の一部はドゥケのこうした姿勢について、必ずしもドゥケが合意を「破棄」しようとしているとは限らない、と述べている。
「麻薬密売人や性的暴行犯が、法の裁きを受けないことなど考えられない」とゲラは話す。「和平合意で、ゲリラになっても得にならないことを示す必要がある」
バレンシアは、ドゥケが何より優先すべき事柄の1つはコカ栽培の取り締まりだと考えている。ロサンゼルス・タイムズ紙によると、コカの年間生産量は、過去2年にわたって50%の増加率が続いており、栽培面積は約10万ヘクタールに及ぶ。「多くの地域が違法薬物に依存しているせいで、暴力沙汰が起きている」とバレンシアは述べる。「コロンビア政府はこれらの地域を取り締まらなくてはならない」
ドゥケを待ち受けるもの
コロンビアは、経済の低迷や汚職の横行、社会格差や壊滅的状況の医療制度といった課題の解決に取り組んできた。とはいえ、今後4年間かけたとしてもある人たちにとっては事態はまったく改善しないだろう。
「コロンビアの経済は悲惨な状況であり、悪化の一途をたどっている。財政赤字は膨らみ、医療制度は、汚職のせいで崩壊寸前だ」と言うのは、左翼政党のオルタナティブ民主極(Alternative Democratic Pole)に所属し、今回の大統領選ではどの候補者をも支持しなかったホルヘ・エンリケ・ロブレドだ。「私はわが国について悲観している。白票を投じたのは、どの候補者にも納得できなかったからだ。現在のサントス政権は、1990年以来の悲惨な経済を置き土産にした」
悲観的なのはロブレドだけではない。「守旧派の支持を受けたドゥケが大統領では、進歩は期待できない。ドゥケは若いが、恵まれない国民を犠牲にしてあらゆる特権を享受してきた既成勢力の操り人形だから尚更だ」と、アベジャは言う。
しかし民主中道党の党員らは、若さがドゥケの最大の強みだと考えている。「ドゥケは、過去20年にわたってこの国を支配してきた政治家に代わる若い世代の誕生を象徴している」とバレンシアは言う。「ドゥケは、自身の支持者からの影響など一切受けず、何のしがらみもなく大統領に就任する。それが、腐敗防止の取り組みを後押しするだろう」
もし運よく後者だとしても、火種はもう1つある。和平合意の修正だ。いったん無罪放免になったゲリラ転じて政治家が、今更罰を受けるはずがない。
(翻訳:村井裕美、ガリレオ)
ロバート・バレンシア
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