中国はなぜ金正恩訪中を速報で伝えたのか?──米中間をうまく泳ぐ金正恩
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月20日 16時0分
つまり、国連の制裁を回避する形で、人道的支援である「民生」という項目の形を取って、北朝鮮に現状でも経済支援をする意思があることを表明したことになる。
金正恩にしてみれば、これさえ言ってくれれば、北京詣でをした甲斐があるというもの。欲しいのは、このチャイナ・マネーだ。その証拠に北朝鮮の報道では、中国の支持・支援を得ることができたということをアピールしたと解釈することができる。
一方、二人の表情に注目していたのだが、金正恩の笑顔は、トランプと会った時のような高揚感はなく、かなりビジネスライクな対応のように見えた。それに比べて習近平の方が、ややへつらうような表情を時折見せたのが印象的だった。
それもそのはず、習近平は最後に断固たる表情でダメ押しをするかのように「中国は半島問題に関して引き続き重要で積極的な役割を果たしていく」と言ったのである。
つまり、「朝鮮半島問題解決には、中国は不可欠だ」、それを忘れて平和体制構築に当たって米韓朝「三者協議」などということを考えるなよ、とクギを刺したのであり、「朝鮮半島問題に関して中国が果たしてきた役割を忘れるな」と実質的には迫ったということになる。
それに対する金正恩の笑顔はなかった。
軽くうなずきはしたものの、CCTVのカメラは、金正恩の、一瞬左右に動いた目つきを捉えていた。いずれはそこから抜け出す戦略を描いていることを、ふと反射的に思ったのかもしれない。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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