ジュリエット・ビノシュと河瀨直美が紡いだ「ビジョン」。
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月21日 11時30分
──山の神、木の神といった、アニミズムの影響も大きい河瀨映画ですが、神秘的な体験をするジャンヌの役には、宿坊での体験が影響しましたか。
「宿坊でもそうだけれど、私は世界に向かって開いている人間なので、日常的に自然界とコネクトしているの。たとえば、鉱物や、植物や、動物といった、自然界のものと五感を通してコネクトすることができる時、自分の中にエネルギーが降りてくるのを感じるの。ただ、このエネルギーに加え、大事なのはインテンション、意志。アクションが意志に合流するというか、アクションの前にインテンションがないと、何かが欠けてしまう。アクションを受け入れる意志を持つことがとても大事。だからまず朝起きたら、すぐに何かを自覚する。朝から感覚を研ぎ澄ますことが大切なの」
夏木マリ(右)、美波(左)らが共演。
謎に包まれた物語に、ビノシュが見いだしたもの。
山で暮らす謎の青年・鈴を岩田剛典(左)が演じる。
──"ビジョン"とは何なのか。岩田剛典さん演じる青年はいったい誰なのか。そもそもジャンヌはなぜこの山にやってきたのか。そのあたりが謎に包まれていて、サスペンスフルです。ビノシュさんは、ジャンヌは何を求めてやってきたとお思いですか。
「私自身、わかっているのは、人間には、闇の部分、隠された苦悩、裡なる葛藤というものがあるということ。でもその葛藤も、自分自身で探しに降りていかなければならない。自尊心を捨てて、自分は何もわかっていないこと、迷っていることを認め、謙虚さを体験することによって、そこにようやく光が見えてくる。
ジャンヌもビジョンという薬草が何だかわかっていない。しかも、どんなものか、感覚として感じ得ていない。でも、わかっているのは、苦悩と結びついている、人と結びついている、裡なるものと結びついているということ。自分はそれだけしかわかっていないのだと、認める勇気を持った時に、その人は光を生み出すことができる。そう思って演じたわ」
ジャンヌは吉野の森に住む山守の智(永瀬正敏)の家に滞在し、心を通わせていく。
──では実際に、河瀨監督映画の中で生きてみていかがでしたか。
「河瀨監督はとてもインディペンデントで、自分にとって重要な事柄を口に出して語ることに躊躇しない勇気を持っている人。そして彼女と一緒に仕事をしてみて、彼女ならではの独特のアプローチ法を発見したわ。彼女は、たとえば、俳優のちょっとしたしぐさから、その人の真実を抜き出すというか、引き出すことができるの」
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