アジア駐在の欧米特派員はセクハラ男だらけ
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月21日 18時0分
仕事への影響を恐れ、彼女は匿名を条件に取材に応じてくれた。
10年来アジア各地で取材し、中国の雲南省に住んだこともあるマット・スキヤベンザに言わせると、酒の安さや人目を気にしないでいい環境、セクハラに対する現地の対応の甘さなど、さまざま要因が絡み合っている。「男性特派員の中にはジェームズ・ボンドばりのプレイボーイを気取り、大勢の女性とセックスしてこそ特派員だと勘違いしている連中がいる」と、彼は言う。
記者のセクハラ観は要確認
セクハラ被害に追われるようにして業界を去る女性は多い。加えて給与格差も立ちふさがる。1月にはBBCのキャリー・グレイシー中国編集長が、北米や中東の男性編集長が自分や他の女性編集長より「少なくとも50%高い」給与を得ていることに抗議して、編集長を辞任した。
ソーシャルメディアの普及でジャーナリスト個人の発言の場が増えるにつれ、こうした問題は一般に知られるようになった。しかしアメリカのシンクタンク「ウッドロー・ウィルソン国際研究センター」で米中関係を研究するルイ・チョンによれば、「#MeToo」運動をめぐるアジア各地の報道に反発するかのように、SNS上で怪しげなハラスメント観を披露する男性ジャーナリストも少なくない。
「#MeToo には反発も大きいから、批判的な持論を展開したくなる男性もいるだろう。しかし報道は政治家の姿勢を左右する。ジャーナリストがああいう見解を披露するのは見過ごせない」と、チョンは言う。「例えば中国のセクハラ問題を報道するなら、記者が男女間の合意をどう捉えているのかを事前に確かめるくらいが妥当だと思う。どんな報道がなされ、被害者がどう描かれるかは彼ら次第なのだから」
海外勤務には苦労が付き物だし、危険も潜む。ジャーナリストはジャーナリスト同士、嫌がらせをするより助け合うべきだ。実際、たとえライバル会社に勤めていても、海外特派員は同業者を仲間と見なす傾向が強い。そんな連帯感があるからこそ、彼らは当局の介入などの脅威に対して結束できるのだが、身内のセクハラや暴力の被害を訴えにくい雰囲気にもなる。
欧米のメディアは現地スタッフを使い捨てにせず、自社の人材ネットワークに組み込むべきだ。そうすれば職場の安全と多様性が高まるだけでなく、待遇に不満を覚えながらも立場の弱さから声を上げられないでいる現地スタッフが会社を信頼し、仕事に打ち込むようになる。
全ての支局や支社に人事担当を置く予算がないのなら、せめて女性、とりわけ地位の低い現地スタッフが気軽に相談できる窓口を本社に設けるべきだ。女性を食い物にする連中を、のさばらせてはいけない。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2018年6月26日号掲載>
ジョアナ・チュー(AFP中国特派員)
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