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「トランプは合理的、バカと切り捨てられない」『国体論』著者・白井聡インタビュー

ニューズウィーク日本版 / 2018年6月26日 16時40分



『国体論』の著者・白井聡 

――トランプの問題は政策そのものよりも政策決定がいい加減で、選挙アピールばかりなことにあるのでは。

ただ11月の中間選挙で負ければ、政権運営に支障が出る。ここのところの大統領はみな中間選挙で負けてしまい、指導権を失っている。首尾一貫性がなくても、選挙に勝つことを狙うのはある意味で合理的なところがある。

現時点でトランプを無暗に称賛できないが、「バカ」と切り捨てる議論にもくみしない。米朝交渉でも、リビア方式が持論だったジョン・ボルトン大統領補佐官を抑え込んだことに、トランプの強固な意志を感じた。確かにトランプ政権は官僚のポストが大量に空席で片肺飛行なのに、国家は崩壊していない。驚くべき政権だろう。

――駐留米軍撤退論もトランプ独特の持論だ。

トランプが中長期的にどうするつもりなのかよくわからないが、米韓軍事演習を中止すると言っただけで、日本の親米派は「やめないで」と騒ぎだした。朝鮮戦争が終わるくらいなら、再開して日本に核ミサイルが飛んできた方がマシだというのが彼らの本音だということが明らかになった。「異次元の圧力」というのは、そういうことだ。それもこれも対米従属を続けるためであり、この「国体」を維持するためならどんな犠牲もいとわないというわけだ。第二次大戦中の指導者層と全く同じ発想だ。

――米軍基地問題に関して、トランプの撤退論に期待する声もあった。

対米従属を自己目的化した支配体制を取り除かない限り、日本にはそれをチャンスにできる主体性がない。政官財学メディア全てに言えるが、その主流派は従来の対米従属システムを維持することで自分の権益を守るのが行動原理になっている。「原子力ムラ」という言葉があるが、「安保ムラ」はもっと巨大で、政官財学メディアの主要部分全体が安保ムラだと言えるくらいだ。

「アメリカの一の子分」として戦後復興に邁進した時代には、その問題性が表面化しにくかったし、単なる子分でよいというメンタリティーもなかったはずだ。むしろ復興を支えた日本のエートス(社会規範)は、アメリカに従属しながらも「(経済戦争で)今度こそアメリカに勝つ」という、戦前の教育を受けたリーダー層の複雑な感情にあったと思う。アメリカに反発しながらも、自国の繁栄がアメリカのパワーによって保障されているという矛盾や葛藤がそこにはあった。

ところが世代交代でそうしたエートスが失われ、親米スタンスは、日本の支配層の階段を上る単なるパスポートのようなものになった。そして、復興の成功体験があまりに強烈で、何のための従属が分からなくなってしまった。

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