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金正恩は非核化するしかない

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月9日 12時30分



だから北の反応は、習近平が望んでいる朝鮮半島平和体制構築の中国参加などを「北朝鮮側は、ちゃんと主張しようとしましたよ」ということを習近平に見せ、「北朝鮮はアメリカ側に傾いてなく、中国の段階的非核化支持を、すごくありがたく思っていますよ」ということを習近平に知らせるというリップサービスであったと判断するのが妥当だろう。

その習近平は、おそらく9月9日の北朝鮮の記念日に訪朝する可能性が高い。

習近平としては、金正恩が改革開放を始めて「一帯一路」巨大経済構想に加盟してくれれば、中国の東北一帯に東側の海路への港が確保できる。AIIB(アジアインフラ投資銀行)による投資も、面倒な手続きがなく、実に簡単に審査基準を通過して直接投資ができるので実行するつもりだろう。

中露は、北朝鮮への制裁解除は非核化実現のためだという論理で動いているので、実際上、すでに制裁は崩されているようなものだ。中朝国境では民間レベルの交易は既に活気を帯びている。

それでも北は非核化するしかない

それでも中露ともに北の非核化は経済支援の前提としているので、金正恩は今となっては、その約束を破るわけにはいかない。ポンペオの「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」要求も実は非常に正しいのである(実際には「最終的かつ完全に検証された非核化」にトーンダウンしているようだが)。

なぜなら、トランプとの約束を破れば、今度はトランプが黙っていないだろう。

米中から挟まれては、今度ばかりは、これまでのように世界を騙すわけにはいくまい。

金正恩は既に「非核化するしかない」ところに自らを追い込んでいるということができよう。

金正恩は身の程を心得るべき

それにしても、北朝鮮外務省報道官は、「(交渉が)悲劇的な結果につながらない保証はどこにもない」と表明したそうだ。

また金正恩得意の脅しによってアメリカから譲歩を引き出そうという戦術だろうが、少々危険過ぎはしないか。トランプの逆鱗に触れたら、本当に「悲劇的な結果につながらない保証はどこにもない!」。トランプが大統領中間選挙で困るだろうことから、何もできまいと高をくくっているとすれば、痛い目に遭うのは金正恩だ。身の程を心得た方がいい。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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