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孔子学院で進める中国共産党の対米「洗脳」大作戦

ニューズウィーク日本版 / 2018年7月27日 18時0分



ダライ・ラマの招待を阻止

講演の資料が印刷される前に、私の経歴から「台湾」を削除するように主張したのは羅だった。彼女は大学当局に、この単語を入れることは中国の主権を脅かすと話し、削除しなければイベントをボイコットすると迫った。

大学のプログラムを中国共産党の核心的利益と一致させようと羅が画策したのは、今回が初めてではない。大学関係者によると、孔子学院が地元の公立学校教師向けのプログラムを後援した際も、台湾と関係のある教員の出席を阻止しようとして失敗した。

ワシントンにある孔子学院広報部責任者、高青(カオ・チン)は、「台湾問題」は「政治的なテーマで語学や文化には関係ない」ため、孔子学院のカリキュラムに「含めるべきではない」と語る。「孔子学院の本来の指針は、中国語を教え、文化的意識を啓発することだ。孔子学院は現在の政策や政治を教える所ではない」

孔子学院が検閲の目を光らせているのは、サバナ州立大学だけではない。

09年にノースカロライナ州立大学がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世を招待しようとしたが、学内の孔子学院から「中国と培ってきた強力な関係」を害しかねないと警告されて中止した。14年にポルトガルで開かれた中国研究の学会では、ある孔子学院の責任者が台湾に関する資料に抗議。資料は回収され、学会のプログラムからも台湾関連のページが破り取られた。

ニューヨーク州立大学オールバニ校では、孔子学院の中国人の共同代表が、台湾に言及するポスターを次々に剥がした。その日、孔子学院を管轄する中国・教育省の国家漢語国際推広領導小組弁公室(漢弁)の高官が、大学を訪問することになっていた。

「露骨な規制はないが、特定の話題はタブーだという明確な共通認識がある」と、17年に全米学者協会が出版した孔子学院に関する報告書を執筆したラチェル・ピーターソンは言う。「孔子学院の中では(中国にとって)いいこと以外は存在しない」

一部では対抗する動きもある。カナダのマクマスター大学は13年に孔子学院を閉鎖した。中国で非合法組織とされる気功集団の法輪功に参加していた教員が、孔子学院から圧力を受けたとして、退職後に人権侵害を申し立てたことを受けての判断だった。

シカゴ大学は漢弁の役人と対立し、14年に孔子学院を閉鎖した。ペンシルベニア州立大学も同年に閉鎖。テキサスA&M大学は今年4月に2つのキャンパスで閉鎖を発表している。

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