中国政局の「怪」は王滬寧の行き過ぎた習近平礼賛にあった
ニューズウィーク日本版 / 2018年8月6日 13時0分
一党支配体制を維持するために始めた個人崇拝が、結局は一党支配体制を潰す。そのギリギリの線まで来ていた。
それでも習近平の意向に沿って動くのが党と政府の慣わし。
習近平が意思表示を検討する辺りから、すでに習近平の意をくみ、党や政府のメディアにも「7月12日」前後を中心として異変が起きた。
「7月12日」前後に党と政府系メディアで起きた「怪」
たとえば以下のような事象が連続して起きた。
1.7月9日と12日および15日の3日間、中国共産党機関紙「人民日報」1面見出しには、習近平の文字がなかった。これは異常な現象だ。
2.CCTVも7月12日の北京時間夕方7時のニュースでは習近平に関する報道のときに、いつもはその前に付ける「中共中央総書記」「国家主席」「中央軍事委員会主席」という長い敬称を全て省いて、ただ「習近平」とのみ称してニュース原稿を読み上げた。
3.それだけでも十分に驚くべきことなのに、2回目の「習近平」を言い終わった時だ。いきなり、ニュースキャスターの前に頭から黒い布で体を覆った黒装束の男(の後ろ姿)がテレビ画面に飛び出してきて、キャスターに「差替え原稿」を渡したではないか!
視聴者はみな凍りついたことだろう。一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
不思議なことに女性キャスターは3回目の「習近平」から、いつも通り名前の前に「中共中央総書記」「国家主席」「中央軍事委員会主席」を3つとも付けた。4回目は「習近平」のみ。5回目は「習近平総書記」、6,7,8回目は「国家主席・習近平」。最も「あれ?」と思ったのは男性キャスターが9回目の「習近平」を言ったときに「習近平総書記」と言おうとして、「習近平」と「総書記」の間に、一瞬の間合いが生じたことである。
つまり、どう呼ぼうかと「言い淀んだ」のだ。おまけに目までが一瞬、泳いだ。
多くの華人華僑がざわつき、これら一連の画面をネット公開して(たとえば「これ」など)、ネットはこの「怪」に炎上。
CCTVのテレビ報道が始まってから、初めての出来事と言っていいだろう。
7月13日からは正常に戻った。
4.7月17日付けのコラム「墨かけ女子事件」でも触れたように、(7月11日の夜遅く)中国政府の通信社である新華社の電子版「新華網」に「華国鋒は自分の過ちを認めた」として、「華国鋒が個人崇拝を戒めた」過去の記事(1978年)が突然現れた。それはまもなく削除された。
一党支配体制を維持するための道具「個人崇拝」が、一党支配を滅ぼす
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