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かわいいだけじゃない! 映画『皇帝ペンギン ただいま』で温暖化問題を考える

ニューズウィーク日本版 / 2018年8月23日 16時30分

あくまで映画作品なので、そこで何か強い主張をするということはしない。映画は映画として映像を見てもらい、人々に問題意識を持ってもらうことが役割だと思う。

私は映画以外にも、展覧会のようなものを企画したり、子供たちや学生たちに教育的な材料を提供したり、あるいはCOP21に映像を提供して議論の手助けをしたりしてきた。映画以外のさまざまな手段で自分の主張を伝えられると思っている。

今回はCOP21に合わせて南極に行き、このような映像を撮ったが、同時期にフランスのミッテラン図書館で写真展も開催した。いろいろな方法で子供たちや学校の先生、若い人たちに、的確にこの問題を伝えたいと思っている。映画もその1つであって、あくまでも映像や音や物語性で人々の感情に訴えたい。

日本未公開だが、私は以前に『アイス・アンド・スカイ』という映画を撮った。南極の環境変化を具体的に捉えた作品で、『皇帝ペンギン ただいま』よりも強い政治的主張を込めている。それは映画としても評価され、15年のカンヌ国際映画祭ではクロージング作品として上映された。



50年以内に皇帝ペンギンは絶滅すると指摘する研究者もいる (c) BONNE PIOCHE CINEMA - PAPRIKA FILMS - 2016 - Photo : (c) Daisy Gilardini

――ペンギンの生態の特にどんな部分に、温暖化は影響するのか。

いくつかあるが、温暖化により南極で頻繁に雨が降るようになったことの影響がある。ヒナの羽毛には防水性がないので、雨に濡れたら凍死するしかない。今はすごい数のヒナが亡くなっている。そうした状況を見た研究者たちは、このまま温暖化が続けば50年以内に皇帝ペンギンは絶滅すると言っている。

――世界は温暖化防止の方向に向かっていると思うか。

COP21の採択をみたときには、これはいい方向だと思った。でもその後、特にトランプ米政権の温暖化懐疑主義のような動きを見ると、COP21は何だったんだと思う。今の状況では、何の改善もされていないと感じている。

問題は、自然が変化していくスピードが非常に早いこと。人間がそれを認識しながら対処するにも、そのスピードに付いていけていない。大災害が起きて初めて人間は問題の大きさに気付くんだと思う。

――前作とはナレーションの形式を変えた理由は。

前作は、皇帝ペンギンの目で自分たちを語るスタイルだった。今回は私自身の客観的視点で、ペンギンたちを使いながら、環境を考える映画にしたかった。皇帝ペンギンの描き方が変わったのでナレーションも変えたんだ。

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