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アメフトの元スター選手を広告に起用したナイキ、人権と愛国の落とし穴にはまる

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月7日 16時30分

ナイキは「更正した」と一般には考えられていた。1997年、ベトナムなど東南アジアにおける児童労働、低賃金労働、強制労働といった「奴隷搾取工場」の実態がNGOに暴露されて世界中から批判を受け、ブランドイメージも台無しになった。それ以降、海外工場の労働環境の改善に努め、CSR(企業の社会的責任)の教科書的な成功例として扱われてきた。

世界中の衣料製造労働者の権利を守る団体「クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)」は6月の報告書の中で、労働者が受け取る賃金がナイキの収益に占める割合は、90年代より現在の方が低いと指摘している。


上のCMのパロディ版「Just Do Whatever」


「ナイキとアディダスのスポーツシューズの製造コストのうち、労働者の給料が占める割合は、90年代前半より30%も減っている(ナイキのスポーツシューズでは、1995年に4%だった割合が2017年には2.5%に低下)」と、報告書は述べている。CCCによると、ナイキは中国での賃金が上昇したために製造工程のほとんどをインドネシア、カンボジア、ベトナムに移している。




ナイキ・ボイコット動画。現役時代のキャパニックがひざまずく姿も


これらの3カ国では、衣料製造労働者の平均賃金はいわゆる「生活賃金(一定レベルの生活を維持できる時間給)」よりも45%~65%低いという。

ロイター通信の取材に対してナイキは、すべての工場が最低でもその国の法律で規定された「最低賃金」か、または法律で規定された残業手当などすべての手当を含む「現行賃金」を支払っていると答えた。

ナイキの広報担当者は、「弊社は体系的な待遇改善のため、各国政府、製造業者、NGO、労働組合、そして労働者との対話に長年、時間を割いてきている」と語っている。

しかし労働者支援団体「倫理的取引イニシアティブ」のマーティン・バトルは、ナイキの工場は労働者を「貧困のサイクルに陥れて」いる可能性がある、と主張する。

2017年6月の英ガーディアン紙の報道によれば、ナイキ、プーマ、アシックス、VFC(米アパレルメーカー)の4社の製品を製造するカンボジアの4つの工場を合わせて、過去1年間に500人以上の労働者が職場で体調を崩して病院に運ばれたという。4社ともこうした事態が発生したことを認めている。倒れた労働者のほとんどが、高温と長時間労働が原因の体調不良だった。

キャパニックを嫌う者も

労働組合の代表や労働者は、多くの労働者が1日10時間以上、週に6日間働き、工場内はときには35度前後の高温になることもあると語っている。4社のいずれも月給400ドルに満たないカンボジアの「生活賃金」を支払っていなかった。

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