モーリー・ロバートソン解説:大麻について話をしよう
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月11日 16時0分
ところが、州レベルの保守層の間では、自分たちが何をやっていいかの判断を連邦政府が決定することに対する嫌悪感が強まっていた。これを「Federal Overreach =連邦政府による過剰な干渉」と呼びます。この考え方はオバマケア(医療保険制度改革)への反対にも通じるところがあります。マリフアナに関しても医療保険に関しても「個人の選択を優先させよ」という流れになった。つまり、ヒッピーは嫌いだけれど、連邦政府はもっと嫌いというわけです。
そして、マリフアナ解禁の活動家たちはリベラル系の人も巻き込みつつ、リーマン・ショックで落ち込んだ州財政を回復させるためにもマリフアナが直接税として財源になるとうたったら、本当にそうなったということです。
翻って日本。合法化の話など当たり前のようにないわけですが、マリフアナの議論を始めれば日本に数あるタブーに風穴を開けられると、私は考えています。日本の大麻報道に関するタブーはまさに「触らぬ神にたたりなし」。そんなことを報じようものなら警察に怒られるわ、厚生労働省から手紙が来るわ、テレビだったら放送ライセンスに影響するんじゃないかとか、とにかく腰が引けてしまう。海外の合法化についてニューズウィークも報じていると言っても、「それはカナダとアメリカのことでしょ」となってしまう。
テレビ番組でマリフアナを取り上げる番組編成が仮にあったとしても、必ず麻薬取り締まり関係者の人をゲスト_に呼んで、中毒性がある、絶対駄目です、シャブと同じですという意見で締める。メディアがあまりにも権力にすり寄っていて独立していない。取り締まる側しか語ることが許されず、メディアもセカンドオピニオンを自粛する。いわば言論そのものが既得権益化しているのではと疑ってしまいます。
これは実際に厚労省に問い合わせたのですが、大麻取締法には国外犯処罰規定があります。つまり国外でも使ったり所持したりしたら駄目なんです。例えばカナダで、癌やリウマチの治療で医療大麻を使ったら取締法が適用される可能性があることになります。しかもマリフアナの「使用」じゃなく、「所持」で。大麻取締法が形骸化しているという印象です。
でも、その点も含めて日本メディアは全く伝えないし取材もしない。体質上、日本人にマリフアナは必要ないとか言う人が出てきてうやむやにする。もはや、マリフアナ自体が未経験者同士による空疎な論争の材料になってしまっています。まずは基礎情報を正しく広報することが必要です。ファクトやデータに基づく科学的な知見を元に、ハードドラッグの蔓延を食い止めるハーム・リダクション効果、規制緩和による医療への恩恵、経済効果のシミュレーションなど、大人の議論をするときが来ています。議論そのものを恐れるのは「言霊の呪縛」です。
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