モーリー・ロバートソン解説:大麻について話をしよう
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月11日 16時0分
あまり大上段に構えたくはありませんが、サウジアラビアの女性の自動車運転問題も宗教論争をしている間は絶対に動きませんでした。ところが、この問題がネットで広がって、声を上げられなかった女性たちが活動家として発信を始めたときに意識が覚醒した。コップの中だけで行われていた宗教談義から飛び出した。
既得権益者が少ないのが幸い
英語で Change the conversation と言うのですが、議論がシフトするんですね。対話の幅が広がって、参加する人が増えて意見が多様化して、それまでのように一部の宗教的権威が議論を独占できなくなる。議論に参加するプレーヤーが少ないと、多くの人が排除されて利権も生まれます。それまでは女性が運転していいかどうかを宗教問題に帰結させることで、専門的な問題として封印してきたのです。
日本の大麻報道もそれと似ていて、「マリフアナは駄目だから駄目なんだ」と、議論することさえ許されない。ルールを変えたらどうかという提案ですら、「法律の軽視だ、覚醒剤も合法になったらどうする、マリフアナを吸って包丁を振り回す人間が出てきたら責任を取れるのか」となる。要は、何か自己目的化した、変えたくない法律がある。ただのタブーです。
日本で大麻合法化の議論はほとんどタブー視されている OpenRangeStock/iStockphoto
でも、そのタブーを突き崩せば、それがシンボルになって日本にある「議論しちゃいけないタブー」を話せるようになると思います。天皇制や安保体制、在日外国人差別に同和問題、ヤクザや芸能界......。みんな口を閉ざしていることばかりですよ。そうしたタブーの中で、マリフアナは切り込みやすいのではないかと思います。なぜなら、既得権益者が少ないからです。
マリフアナの合法化問題をニューズウィークが大々的に取り上げたとなれば、リベラル系メディアがアメリカで取材してくれるかもしれない。社会のムードが「議論ならOK」という方向に流れれば、大手の報道番組が日本人の癌患者を追跡取材して、実際にカナダでマリフアナの治療を受けたら痛みが和らいだという「絵」をつくるんじゃないでしょうか。その反響が出ると、厚労省は海外での治療目的の使用を特例で認める、だけど法はいじりたくない。数年たって医療大麻が既成事実化したらやっと法改正。でも微調整が関の山、というところでしょうか。
だから、私は直近では日本におけるマリフアナ解禁にあまり現実性を見いだしてはいない。けれど、その過程でタブーとなっていた議論が少しやりやすくなるという事例が生まれれば、日本社会は面白くなりますよ!
<本誌2018年8月14&21日号掲載>
モーリー・ロバートソン
この記事に関連するニュース
-
支持9割!「トランプ郡」はワシントンとNYが大嫌い 日本人と似ている?根底にある住民の思いとは…
47NEWS / 2024年5月3日 10時0分
-
米政権、大麻の規制緩和へ 医療用など使用拡大も
ロイター / 2024年5月1日 8時27分
-
米、大麻の規制緩和へ=「解熱剤並み」に分類変更―報道
時事通信 / 2024年5月1日 5時34分
-
アメリカで爆発的に広がるスポーツ賭博、若者を夢中にさせる「インゲーム・ベット」とは?【アニメで解説】
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月30日 17時57分
-
水原一平だけじゃない…日本では違法なのに「スポーツ賭博」に手を出す人が増加中。海外に流出する“日本の賭け金”
日刊SPA! / 2024年4月18日 8時52分
ランキング
-
1ロシア、化学兵器使用か 米が制裁強化
AFPBB News / 2024年5月2日 15時18分
-
2ラファ侵攻の方針譲らず イスラエル、強硬姿勢維持
共同通信 / 2024年5月2日 23時9分
-
3ロンドン市長選の投票実施 開票は4日、3選目指すカーン氏に「排ガス規制」のアキレス腱
産経ニュース / 2024年5月2日 16時28分
-
4日本経済低迷の理由、バイデン氏「外国人嫌いで移民望んでいないから」…移民受け入れの利点強調
読売新聞 / 2024年5月2日 17時54分
-
5トルコ政府、イスラエルとの輸出入を“全て停止”と発表 「パレスチナにおける人道的な状況がさらに悪化」のため
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月3日 9時53分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください