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9.11のあの日から17年――「文明の衝突」から「文化の衝突」へ

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月11日 15時0分

どうやら、太陽や月を見て思い浮かべる色は国や地域によって違うらしい。アラブ人の描く太陽の色は、日本人の描く月の色のようだった。同じ地球の太陽と月でも、見る人によって違って感じられる。これは言語学の法則で言うと、「時や場所を越えて物事が同じ性質であっても、それらを認識する仕組みや機能の違いが生じるときがある」ことを示す具体例だ。住む世界は同じなのに、見え方や聞こえ方など世界の感じ方は人により異なる。結果として、言葉や発想などの仕組みの違いをめぐって文化同士の摩擦は後を絶たない。時には、言葉以外のものにまでその過激な摩擦が及ぶ。

そして、最終的にはカエサルの言うように「人間はみな自分の見たいものしか見ようとしない」。

今年の9.11は偶然にもイスラム暦の新年と重なる。中東アラブ地域をはじめアメリカやヨーロッパ、アジアなどの16億人に及ぶイスラム教徒は、この日に新たな年のスタートを迎える。今の世界に広がる人間とその文化による衝突に心の痛みを抱えながら、同じ9.11を「悲劇の記念日」と見るか、「新年のお祝い」として迎えるか。2つの「特別な時間」が、今日の世界に見られる憎悪の連鎖にも重なる。

9.11と、衝突の連鎖が起きた21世紀は単なる20世紀の延長ではない。過去・現在・未来を同時に生きなければならない、「複合の世紀」だ。これまでの「文明の衝突」に関する議論が過去中心、または未来中心の、どちらか片方の見解によってなされたとすれば、今後は、過去の中の未来、そして未来の中の過去を、同時に読み解こうと努力していかなければならない。


【執筆者】アルモーメン・アブドーラ
エジプト・カイロ生まれ。東海大学・国際教育センター准教授。日本研究家。2001年、学習院大学文学部日本語日本文学科卒業。同大学大学院人文科学研究科で、日本語とアラビア語の対照言語学を研究、日本語日本文学博士号を取得。02~03年に「NHK アラビア語ラジオ講座」にアシスタント講師として、03~08年に「NHKテレビでアラビア語」に講師としてレギュラー出演していた。現在はNHK・BS放送アルジャジーラニュースの放送通訳のほか、天皇・皇后両陛下やアラブ諸国首脳、パレスチナ自治政府アッバス議長などの通訳を務める。元サウジアラビア王国大使館文化部スーパーバイザー。近著に「地図が読めないアラブ人、道を聞けない日本人」 (小学館)、「日本語とアラビア語の慣用的表現の対照研究: 比喩的思考と意味理解を中心に」(国書刊行会」などがある。


アルモーメン・アブドーラ(東海大学・国際教育センター准教授)


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