それでも私は辞めません......安倍首相の異例の長期政権が意味するもの
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月15日 16時20分
これまでの首相より支配権を固めていることも大きい。党内の妥協の産物でしかないこともあった過去のリーダーとは対照的に、安倍は自民党内の実力者として長らく君臨している。
経済、自由貿易、憲法改正
さらに、近年の前任者らに比べて多くの成功を収めているとの主張もできる。「政権が長期間継続しているという事実だけで、安倍は国際問題で日本の存在感を増すことに成功している」と、テンプル大学ジャパンキャンパスのジェームズ・ブラウン准教授(政治学)は言う。「頻繁過ぎる交代のせいで、日本の首相と関係を築いても意味がないと思われていた時代とは違う」
第2次政権発足以来、安倍が国内外で数多くの成果を出しているのは確かだ。ニュートラル状態だった日本経済はアベノミクスによって、少なくともローギアか、セカンドギアに入った。デフレの影響で97年から停滞傾向にあった名目GDPは政権発足からこれまでに約12%上昇。失業率が2.4%に低下する一方で、高齢化に伴う人口減少にもかかわらず労働力は5%増加した。労働力人口に占める女性の割合は10%増え、25歳以上の労働力率は今やアメリカを上回る。
安倍政権の下、日本は自由貿易の旗手となった。アメリカが離脱表明した後のTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉では、残る11カ国での署名に向けて主導的役割を果たした。EUとの経済連携協定(EPA)にも署名。合わせると世界のGDPの3割を占める日本とEUの協定は、1対1の自由貿易協定としては過去最大規模のものとなる。かつて貿易障壁で知られ、リンゴからスキー板まであらゆるものの輸入に抵抗していたあの日本がだ。
だが安倍が続投したがる理由はほかにある。周知のとおり、憲法改正の実現は彼の夢だ。日本国憲法は改正されていない世界で最も古い憲法と言われるが、安倍は昨年、その憲法を改正して自衛隊の存在を明記したいと述べている。だがさまざまなスキャンダルに見舞われ、この目標の実現は遠ざかっているように見える。
20年の東京五輪まで続投したいという思いも安倍にはある。ちなみに19年11月まで首相の座にいられれば、桂太郎を超えて史上最も通算在職日数の長い首相となる。
前述の谷口に言わせれば、スキャンダルが明らかになった後の昨年10月の衆院選でも安倍の続投が難なく固まったことから、有権者はスキャンダルを大して重視していない。「有権者はおしなべて、現下の局面には政治の安定が何より大切だと思っている」と彼は書いている。
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