それでも私は辞めません......安倍首相の異例の長期政権が意味するもの
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月15日 16時20分
一方、元外交官で政治評論家の沼田貞昭は、スキャンダルに対する政府の対応は国民の政府に対する信頼を損ねたと指摘する。「リーダーが責任を取るのを人々は見たがっていると思う」
加計学園の理事長との面会などの問題で安倍や関係者の発言の矛盾が明らかになっているなか、政治的状況が急変する可能性も消えてはいない。
沼田によれば、国民にとって大事なのはリーダーが権力を傲慢なやり方で行使しているかどうかだ。「国民にとっては、総理、内閣、および官僚たちから成る政府を信頼できると感じることが重要である」と彼は書いている。
党内にもライバルはおらず
だが現時点で安倍の命運を握っているのは有権者ではない。安倍は21年10月まで衆院選を行う必要がない。
その一方で、首相であり続けるためには自民党総裁の座を手放すわけにいかない。過去のほぼ全ての首相交代劇の舞台だった自民党だが、安倍の下でこれまで禁じられていた連続3選を認める党則改正を行っている。9月の総裁選でも、党内には知名度が高い特筆すべきライバルもいない。安倍より支持を集められそうなのは小泉進次郎くらいのものだが、37歳という若さではまともな総裁候補たり得ない。
長期政権であること、そして国際舞台での存在感が現時点で安倍にプラスになっているのは明らかだ。だがもし彼が総裁選に負けるようなことがあれば、比較的知名度の低い人物が首相の座に祭り上げられるという、どこかで見たような光景がまた繰り返されることになる。東京五輪までに2人以上の首相が生まれることにもなりかねない。
だがもし安倍が旧来の型を打破することができたのなら、未来の首相たちにとってはスキャンダルを生き延びるお手本となるだろう。任期は最後まで全うするのが当たり前、という心構えで首相に就任する時代が来るかもしれない。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2018年9月11日号「特集:『嫌われ力』が世界を回す」より転載>
ウィリアム・スポサト(ジャーナリスト)
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