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北方領土をめぐって交錯する日本とロシアの思惑

ニューズウィーク日本版 / 2018年9月22日 14時0分



経済協力でお茶を濁す

ロシアは第二次大戦末期に北方領土に侵攻して以来、入植と軍事基地の建設を通じて実効支配を強めている。安倍は日本の歴代首相と同じように領土問題の解決を目指す上で、プーチンとの個人的な関係を維持している自分なら、変化をもたらせるのではないかと考えている。

とはいえ、安倍の求愛にもプーチンはつれない。日本は近年、領土問題をめぐり新たな提案をしているが、ロシアが歩み寄る気配はない。

今のところ両国は、四島の共同経済活動など、領土問題よりはるかに容易な合意でお茶を濁している。9月の首脳会談では5月と同様に、共同経済活動に備えて民間調査団を派遣することが発表された。

しかし、より厄介な領土問題で合意できるかどうかとなると、両国の見解には依然として大きな隔たりがある。日本は依然として全島返還にこだわっているが、ロシアは一歩も譲る気配がない。その結果、返還交渉は膠着状態に陥り、第二次大戦後の正式な平和条約の締結は棚上げされたままになっている。プーチンは合意の可能性を完全には否定せず思わせぶりな態度を続け、双方が納得できる形での解決は可能だが時間がかかると主張している。

そのため日本の指導者たちは非公式にさまざまな提案と妥協案を提示してきた。とりわけよく議論されているのは、北方領土全面積の7%を占めるにすぎない色丹・歯舞の2島返還と残り2島の「共同統治」もしくは開発を軸とするものだ。しかし日本がある程度の柔軟性を示しているにもかかわらず、ロシアとしては相変わらず領有権の問題もこうしたアプローチも受け入れ難いようだ。

欧米との関係冷却化を背景に、ロシアは間違いなく日ロ関係の改善を望み、日本企業からの投資拡大を歓迎している。だがロシア国内の強固なナショナリズムを思えば、ロシアでいう「大祖国戦争」で獲得した領土を経済的な動機だけで引き渡すとは考えにくい。

一方、日本はウクライナ問題で対ロ制裁を続けている。北朝鮮のミサイルの脅威に対抗すべくアメリカのミサイル防衛システムを導入すると決定したことで、ロシアの怒りを買ってもいる。何より、日本の多国籍企業はロシア極東での合弁事業による経済計画推進を迫られているが、ロシアへの投資をためらっている。なかなか進展しない状況に、日本国内ではいら立ちが募る。

ロシアとの経済関係強化の試み(16年5月の首脳会談で日本が提案した8項目の協力プランなど)は、いわば新たなニンジンだ。日本は長年、北方領土返還と平和条約締結で合意することを前提に、ロシアの鼻先にニンジンをぶら下げて関係強化を狙ってきた。こうした試みはエネルギー不足の日本にも役立つはずだ。日本のエネルギー供給は中東頼みで、原子力発電も停滞。ロシアとの協力のチャンスに目を向ける必要性が浮き彫りになっている。

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