北方領土をめぐって交錯する日本とロシアの思惑
ニューズウィーク日本版 / 2018年9月22日 14時0分
中ロの間に「くさび」を
しかし、北方領土問題は厄ではあっても、「諦めない」姿勢自体が肝心だ。長期的には、日本を中ロの間に割って入るくさびにすることが何より重要になる。エネルギー確保と投資のチャンスを強化すること以上に、安倍にとって最も重要な動機は戦略的なものだ。日本がロシアとの関係を強化すれば、(理屈の上では)海上での合同軍事演習を重ねるといった中ロの安全保障協力が自国の利益になるのか、とロシアに懐疑心を抱かせることができる。南シナ海など各地で強引に領有権を主張する中国への牽制になるだろう。
日本政府は、ロシアが戦略的パートナーになるという幻想も望みも抱いていない。両国の国益が一致する範囲はごく狭く、「2プラス2」は現実に結果を出すというよりは親善の印だった。それでも安倍はロシアへの関与を(まだ見返りはほとんどなくても)低リスクと見なしており、いずれ、中ロの戦略的関係を弱め得る「配当」を求めるだろう。
ロシアは今後も日和見的に振る舞うはずだ。それでも安倍の立場からすれば「2プラス2」の会合を重ねる価値はある。中国に接近し過ぎることが本当に得なのかロシアに懐疑心を植え付け、同時に、ロシアに対する中国の信頼にも揺さぶりをかけるのだ。
<本誌2018年9月25日号掲載>
From Foreign Policy Magazine
J・バークシャー・ミラー(米外交問題評議会研究員)
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