「合意なき離脱」へのカウントダウン その時何が起こるのか
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月1日 19時11分
<EUとの「離婚条件」がまとまらないまま離脱期限を迎えれば、経済に大打撃の可能性も>
イギリスのEU離脱(ブレグジット)の期限とされる2019年3月29日まであと半年を残すだけになった。大きな問題は、離脱協定でEUと合意できるのか、それとも「合意なき離脱」になってしまうのかという点だ。
イギリスとEUが無事何らかの協定を結ぶのであれば、10月18日までに双方が合意しなければならない。すぐ目の前だ。交渉はほぼまとまっているとの噂もあるが、ブレグジットの枠組みを巡る議論はイギリス政界を引き裂いている。EU側の交渉担当者と加盟諸国は少なくとも足並みをそろえているように見えるが、メイ英首相と与党・保守党は出口戦略をまとめきれずにいる。
最近のイギリスは、EUとの離婚条件も決めないまま別れる「合意なき離脱」に向けて転がり落ちているようだ。当初提案されていた2年間の調整期間もないまま、イギリスはハードランディングを余儀なくされかねない。合意なき離脱は、航空便の欠航や国境検問所の封鎖、通貨ポンドの暴落に加えて、食品や医薬品の輸入が滞るといった事態も招きかねない。
メイは先ごろ、合意なき離脱に備えて食料供給確保を担当する大臣を任命した。
先が見えない経済界
イギリスの欧州連合離脱省の報道官は本誌に対し、イギリスとEUは必ず離脱条件で合意に至るとの見方を述べた。「だが責任ある政府として、あらゆる可能性に備えた計画立案を行っている」と報道官は言う。「合意なき離脱に備えるのは、個人や企業に対する短期的な混乱のリスクを最小化するためのものだ」と報道官は述べた。
合意なき離脱に備えた計画が進んでいるとはいうが、実際に必要なインフラが間に合うかというと危ういものだ。それでもメイは、合意なき離脱のシナリオはけっして「世界の終わり」ではないと言う。
メイの楽観的なコメントは英企業にとってほとんど慰めになっていない。規模を問わず多くの企業がすでに、ビジネス上の大きな決定を先送りすることを検討したり、ブレグジットの衝撃から身を守るために人員や支出の削減を始めている。大手企業の中には、海外に事務所や人員を移し始めたところもある。
イギリスの小規模企業連盟(FSB)で政策分野を統括するソナリ・パレクは本誌に対し、企業はEUとの最終的な離脱合意がどんなものになるか注視していると語った。パレクによれば、FSBが調査した小規模企業のうち合意なき離脱に備えた行動計画を立て始めているのは14%に過ぎないが、影響を懸念している企業は41%に上っているという。
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