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「合意なき離脱」へのカウントダウン その時何が起こるのか

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月1日 19時11分

最近の調査では、小規模企業経営者のうち、移行期間のない合意なき離脱の場合には短期的な悪影響を被ると考えている人が48%に上った。こうした調査結果から浮かび上がるのは「血の気が引くような」未来図だとパレクは言う。

国民の不安を軽減するため、政府は合意なき離脱に備えた対応について説明する文書を公開している。パレクに言わせれば、これは歓迎すべき対応ではあるものの、「長いプロセスの第一歩に過ぎず、時間はあまり残されていない」と語る。

FSBは企業に対して合意なき離脱に備えよとは言っていないが、今月の首脳会議が転換点になるだろうとパレクは言う。もし合意なき離脱がさらに現実味を帯びてくれば、FSBは企業に対し、混乱に備えて現金を持つよう呼びかけるとともに、負担軽減のための補助金を政府に提案するという。

メイ首相の「チェッカーズ案」の不人気ぶり

メイは急激な変化を避ける方向でブレグジットの青写真を立案した。「チェッカーズ案」と呼ばれるこの案では、EUのさまざまな法規制と足並みをそろえたままでのソフトランディングを提案している。メイとその支持者にとって、チェッカーズ案は議会の支持を得て、最終的な離脱協定の是非を問う投票での勝利を目指せる現実的な解決案だ。

だが批判的な人々に言わせれば、これはイギリスをEUの「従属国」にしてしまう案だ。自国の法律も思うようにできず、EUの官僚の好きにされてしまいかねない。

強硬な離脱推進派は、政治抜きの包括的な自由貿易協定をEUと結ぶべきだと訴えている(EUは類似の協定をカナダと結んでいる)。だがアイルランドと北アイルランドの国境問題への答えは提示できていない。

そもそも保守党がチェッカーズ案に期待を寄せたとしても、EUはそれほど乗り気ではない。オーストリアのザルツブルクで9月19〜20日に開催されたEU首脳会議の席上、メイは他のEU加盟諸国からそろってチェッカーズ案を拒絶されるという屈辱的な目に遭った。同案への支持を呼びかける機会になるはずが、総スカンを食ってしまったわけだ。



それでも英王立国際問題研究所のマシュー・グッドウィン研究員は「合意なき離脱の可能性は非常に薄いと思う。合意なき離脱に賛成しているのは議会内の多数派ではないし、イギリスは合意なき離脱を望んでいないしEUも望んでいない」と語る。

にもかかわらず、グッドウィンは本誌に対し、メイは保守党内の反乱を食い止めたいのなら自由貿易的な解決策に向かう必要が出てくるだろうとの考えを示した。

メイはこの議論をチェッカーズ案か合意なき離脱かの選択の問題だと訴えているが、グッドウィンはこのアプローチには反対だ。「そんなことを言わなければまだ開かれていたかも知れない他の進路を断ってしまった」とグッドウィンは言う。「メイは、保守党内の多くの抵抗勢力を結集させる方向へと自らを追い込んでしまった」

(翻訳:村井裕美)


デービッド・ブレナン


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