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シリコンバレーの異端児、マスクとテスラは成熟へと脱皮できるか

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月2日 15時45分

そのテスラがいま迷走している。問題は大きく3つある。1つは、生産体制の偏りだ。テスラの生産工程では、車両の大量生産よりもエネルギー源であるバッテリーの量産に関心が払われてきた。その一方で、車両そのものの量産体制は整っていない。例えば量産車の「モデル3」は受注に生産が追い付かず、ビジネスチャンスを大きく逸することになった。

2つ目は、その結果として出てきた資金繰り不安だ。今年4月1日の「エイプリルフール」にマスクが「テスラ破綻」という「悪い冗談」をツイートし、これが市場から不評を買う出来事があった。もっと深刻なのは、マスクが8月7日に流したツイートだ。この中でマスクは、テスラの上場廃止を示唆。市場は「プレミアムを乗せての買い取り」への期待が高まるなど混乱し、テスラ株は乱高下した。

だが、これは違法な株価操作と言われても仕方がない行為で(この件で米証券取引委員会は、9月27日にマスクを証券詐欺罪で提訴。その後、マスクが罰金を支払いテスラ会長職を退任することで両者は和解)、マスクはこの発言をすぐに撤回。しかしより深刻なのは、この騒動でテスラが安定したキャッシュフローを維持していないという懸念が広がってしまったことだ。



3つ目は、自動運転技術における開発の遅れだ。完全なEVに加えて、「準」自動運転機能を搭載しているというのがテスラ車のセールスポイントで、マスクは常に「数年先には完全な自動運転を可能にする」とブチ上げてきた。だが、競合のグーグルやウーバー/トヨタ連合、アップルなどは、既にハイスペックな試験走行車を投入し、多数のセンサーからのデータを統合してAI(人工知能)に操縦判断をさせる技術の完成を目指している。

自動運転ソフト開発の出遅れ

これに対して、テスラの取り組みは周回遅れと言わざるを得ない。今年3~4月にかけて、市販のテスラ車に搭載されている「オートパイロット」という準自動運転機能を過信したドライバーによる深刻な事故が続いた。脇見運転が許容されるという誤解を与えた点も批判されてしかるべきだが、問題は高速道路上での準自動走行機能の際に、テスラ車の場合、前方確認用のセンサーがミリ波レーダーとカメラ、赤外線センサー「だけ」で、最新の「レーザー照射センサー(ライダー)」が搭載されていない点だ。

仮に、市場で騒がれている「資金不足」が事実なら、巨額の投資を必要とする自動運転AIのソフトウエア開発に十分な資金を回すことができず、さらにライバルに後れを取ることになる。

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