芸能界に続いてインターポール、中国でいま何が起きているのか
ニューズウィーク日本版 / 2018年10月11日 12時40分
となると、海外のどこかに潜む「キツネ」になってしまって、中国当局の「キツネ狩り」の対象となる可能性が、この時点ではあった。習近平は反腐敗運動に当たって「虎退治」と「ハエ叩き」および海外の藪に潜んでいる「キツネ狩り」を対象としている。
孟宏偉がアメリカに亡命し、トランプ大統領を喜ばせる可能性もゼロではなかっただろう。習近平はその危険性を感じ取り、手を打ったと考えられる。トランプが中国に高関税をかけ始めたのは今年の3月。タイミングも一致する。
アメリカに亡命した郭文貴との関連
ワシントンにはアメリカに亡命していた中国人実業家・郭文貴という例がある。彼は中国指導層の有力な機密情報を握っていると吹聴し、トランプ政府と何らかの形でつながっている関係者の庇護の下にある。
2017年4月19日、ワシントンのVOA(Voice of America)は郭文貴をテレビ取材していた。ところが突然その取材が途中で切られてしまう。中国当局からの指示が出て、VOAの中に潜っている中国政府の言う通りに動く五毛党(ここでは言うならばスパイ)が中断させたらしい。
長い説明を必要とするので、結果だけを書くならば実は中国はインターポールに訴えて、郭文貴を国際指名手配していた。だからVOAの放映を中断させる権限があると主張した。しかし実はインターポールのホームページには郭文貴指名手配情報が載っていない。インターポールは、前述の「キツネ狩り」を手伝う仕事をやっている国際機関であるはずで、中国は郭文貴のように中国政府指導層の機密情報を持っている者が海外でそれを暴露しないように、インターポール総裁に中国人を置くためにインターポールに巨額の分担金(毎年6000万ドル、年々増額)を支払ってきた。しかしインターポールが非協力的になってきたので、中国は中国独自の「紅色指名手配」という名目で、国際手配をしている。しかしこれは犯人の身柄引き渡しの約束がある国との間でないと通用しない。
実はこの時点で、孟宏偉を中国に呼び戻すべきだった。しかしそれをすれば、もう二度とインターポール総裁に中国人を置くチャンスはなくなるだろう。習近平の心は揺れていたにちがいない。
ここまで状況が迫れば、孟宏偉も観念していただろう。だから9月末の、公安部からの「帰国せよ」という命令に従った。空港に着くなり、連行されたわけだ。奥さんの携帯に送った刃物の絵文字は、覚悟していた証拠と判断される。
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