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今年のノーベル平和賞のテーマに性暴力が選ばれた訳

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月12日 15時45分

<1年前に始まった #MeToo 運動が授賞の背景に――文学賞関係者のレイプ疑惑も影響した?>

ノルウェーのノーベル賞委員会は10月5日、性暴力と闘う2人の活動家に今年の平和賞を授与すると発表した。1人はイラクの少数派ヤジディ教徒で、テロ組織ISIS(自称イスラム国)による性暴力の被害者でもあるナディア・ムラド。もう1人はコンゴ(旧ザイール)で、被害女性の治療と支援に取り組む医師デニ・ムクウェゲだ。

同じ頃、アメリカでは性的暴行疑惑が持ち上がっている保守派の最高裁判事候補ブレット・キャバノーの指名承認がほぼ確実になった。

2つの出来事には直接の関係はない。だが1年前のこの日は、ニューヨーク・タイムズ紙が大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーンによる悪質なセクハラ行為を暴露した日だった。この報道をきっかけに、性的被害を告発する「#MeToo」運動が世界中に拡散した事実を抜きにして、今年のノーベル平和賞を語るのは難しい。

ノーベル賞委員会のベリット・レイスアンデルセン委員長は記者会見で、今回の受賞者と#MeToo の関連を認めた。「重要なのは女性の苦しみや性的虐待に目を向けること。その意味で両者には共通点がある」ムラドは3カ月にわたりISISの性奴隷にされ、母親を含む多くのヤジディ教徒の女性が殺された。ムクウェゲが何万人ものレイプ被害者を治療したコンゴ東部は国連が「世界のレイプ首都」と呼ぶ地域で、本人も家族も武装勢力に襲われた。

文学賞の醜聞が影響か?

ノーベル平和賞については、数十年前から次第に「政治化」してきたとよく言われる。ノーベル賞委員会は「正しい歴史の側」と見なした運動や個人に応援メッセージを送る傾向がある。

特に平和や人権のために活動する個人や組織が圧力を受けている場合は、「成果や実績より目標や夢に賞を与える」と、平和賞に詳しい米ミネソタ大学のロン・クレッブズ教授(国際政治)は指摘する。「債務危機で圧力を受けていたEUに賞を贈ったり、IAEA(国際原子力機関)の目標達成を後押しするために受賞させたこともある。(今年も)それと同じだ」

おそらく最も有名なのは09年、就任後1年もたたないうちに受賞したオバマ米大統領の例だろう。だがオバマは結局のところ、ノーベル賞委員会が期待したような平和の使者ではなかった。オバマ政権はアフガニスタンの米軍を増派し、ドローン(無人機)を使った攻撃を3倍以上に増やした。

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