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ダイバーシティ論は「グローバル戦略に必要」なだけではない

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月25日 16時30分

他方、上述のように1980年代より欧米の巨大企業を中心として、企業活動のグローバル化が進展し、市場・技術の多様化に対応した人材の登用が企業のグローバル戦略上、必要となってきたのである。

世界各地のローカル市場には、当該市場に精通した、すぐれた人材を登用しようという「グローバル市場における適材適所」の方針が世界各国の有力企業において採用された。



日本でも2000年に「ダイバーシティ・マネジメント」の機運が生まれたが

2000年に、日経連(当時)が「日経連ダイバーシティ・ワーク・ルール研究会」を発足させたのを皮切りに、企業側も環境に配慮した経営としての「サステナビリティ・マネジメント」(Sustainability Management)とともに、人材の多様化に対応した「ダイバーシティ・マネジメント」を積極的に取り入れていこうとする機運が生まれた。

今後、グローバル化の展開の中で、企業が「ダイバーシティ・マネジメント」に対して留意すべきことは、(1)多様な背景をもつ従業員を確保していくためにダイバーシティ倫理に基づいた企業行動をとっていくこと、(2)多様な背景をもつ従業員を雇用している企業は多様な顧客に十分に対応できること、(3)グローバル市場は言語的能力、文化的な感受性およびそれぞれの市場間における国民性やその他の相違をよく知っている労働力を必要とすること、などである。(Post, J.E.et al., 2002=2012:128)

アメリカン・スタンダードに象徴されるような一元的な価値観によるグローバル市場の支配という、これまでの経営戦略は、世界の多様な市場や顧客を獲得していくには困難となりつつある。今後、グロ-バル市場を勝ち抜いていくためには、ハイブリッドな(異文化価値融合的な)価値観をもち、多元的な市場反応ができるような多様性のある人材が必須の要素となりつつある。

さらに、「ダイバーシティ」を「個人の確立の問題であり、自分の生き方や価値観を大切にしながら他人の生き方や価値観を認め、社会の成員がいきいきと活動し、人生を楽しむことを可能にするものである」といったような社会的価値としての理念を基本とした上で、それを経営戦略に活かし、そうした戦略を推進していく人材を育成していくことができれば、その企業は真の「ダイバーシティ・マネジメント」に成功したグロ-バル企業になることができるのである。

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