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「ブラジルのトランプ」極右候補が大統領に選ばれた理由

ニューズウィーク日本版 / 2018年10月29日 19時20分



ブラガによれば景気後退や暴力事件の増加、縮まらない社会格差を背景に、多くのブラジル人が「劇的な変化を望み、いわゆる既存の政治勢力に背を向けた」という。多くの有権者は性差別や同性愛者への差別、人種差別といった問題への懸念を抱いてはいたものの、そうしたテーマは今回の選挙ではあまり「重きを置かれなかった」。「安全や失業、経済成長」を巡る懸念のほうが大きかったからだ。

ブラジルの殺人事件の発生率は極端に高い。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、16年の人口10万人あたりの殺人事件数は、アメリカでは約5件だったのに対しブラジルでは30件近かったという。また、失業者の数は1300万人近くに上り、率にして12.1%。経済は元気がなく、GDPはマイナス成長だ。

だが「支持しない」と答える人が多いのはボルソナロもアダジも同じで、決選投票の当日までどちらに票を投じるか決めかねていた有権者は多かった。決選投票の数日前、ブラジリアのジャーナリストであるアランナ・フェレイラは本誌に「投票するかどうか分からない」と語っていた。

「どちらの選択肢もまったくいただけない」とフェレイラは言った。PTはあまりに長く政権の座にいすぎたし、人権問題や環境問題に対するボルソナロの考え方にも懸念が残るというのだ。

「少なくともボルソナロの経歴にはまだ『汚職』はないけれど」とフェレイラは皮肉交混じりに言った。

かき消された人権や差別問題への懸念

ベロオリゾンテに住む大学院生、レナト・ナスルは本誌に、アダジに投票するつもりだが納得した上での決断ではないと語った。

「(労働)党も最初は国のためにいいことをしたと思う。いくつもの社会政策を立ち上げ、最も貧しく恵まれない人々を救ってきたからだ。だがルラの2期目の終わりにかけて、経済問題が出てきてPTの経済面での失策が明るみになった」とナスルは言う。

だが一方でナスルは、ボルソナロへの投票を「道義的には正当化」することはできないと語った。「彼はあらゆる点で私の信条と反する」とナスルは言う。「彼は選挙運動中、例えばブラジルの人種的少数派や女性の権利を守る運動、LGBTの権利、労働者の権利といったものに強く異を唱えてきた」

9月末、フェミニズムの活動家たちはソーシャルメディア上でボルソナロへの不支持を訴える大規模なキャンペーンを開始した。だがこうした反発にも関わらず、ボルソナロは女性有権者の間でも支持を拡げた。

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