「政権打倒は叫ばない」ジャマル・カショギ独占インタビュー
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月1日 18時45分
――もし彼が司法改革を行い、イスラムの多様性を認めたら......。
イスラムは多様な宗教だ。そこは重要だ。ワッハーブ派の核心を成す原則は多様性を認めないこと。ワッハーブ派は真理の所有者、唯一の所有者を自任している。そのために他のあらゆる宗派と対立することになる。
――サウジアラビアでは女性はさまざまな法律で男性の保護下に置かれているが、これらの法律を撤廃する真の司法改革が必要ではないか。これらの法律はイスラム法に基づくものではない。イスラム法では自分の意思で結婚するなど女性の権利が認められている。
女性の問題はもちろん重要だが、司法改革をそれだけに矮小化してはいけない。建国の父アブドル・アジズの時代からサウド家は成文法の制定を拒んできた。成文法は世俗的だと。私の言う改革は成文法の制定だ。手続きを踏んだ裁判が行われ、(成文法に基づいて)裁判官が判決を下すようにする......それこそが必要な改革だ。
――ムハンマドは王族など多数の有力者を逮捕し、リッツ・カールトンに監禁した。汚職容疑が事実なら逮捕は当然だが、まともな司法手続きは取られず、証拠もなく、透明性はゼロだ。
ムハンマドにはそんな発想はないだろう。彼は今でも......心の奥深くでは、昔ながらの部族の長なのだ。例えばクウェートは湾岸諸国の仲間であり、社会はサウジアラビアとよく似ているが、司法制度ははるかに進んでいる。はるかに透明性が高い。
ムハンマドはなぜ司法改革の必要性を認めないか。それをやれば、彼の専制支配が制限されるからだ。私は時々感じるのだが......彼は先進国の豊かさや高度な技術、シリコンバレーや映画館といったものを享受しつつ、その一方で祖父と同じやり方で国を治めたいと思っているのではないか。
――その2つは両立しないのでは?
彼は両立させたいと思っている。
――そこが分からない。両立するのか。
まず言えるのは、サウジアラビアには彼に圧力をかけるような政治運動が全くないこと。それが第1だ。加えて、世界は彼に満足している。アメリカでは、バーニー・サンダース(上院議員)を除いて、ムハンマドに圧力をかけろと言っている政治家がいるだろうか。誰もいない。
――でも、ジャマル、思い出してほしい。2004年にも改革者と呼ばれる人がいた。それはバシャル・アサド。84年にもいた。サダム・フセイン。ちなみに彼らを改革者と呼んでいたのはアメリカ人だ。
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