ユーロ圏を脅かすイタリアの暴走
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月2日 15時40分
――イタリア発のユーロ危機が世界的な金融危機をもたらす可能性はあるのか。金利が極めて低い水準にあるなか、世界の中央銀行が取れる手段は限られているようにみえる。
もしヨーロッパが世界的な金融危機の引き金を引くとすれば、イタリアが震源地になるだろう。イタリアは世界第4位の国債発行国だ。現在、金融市場は全体としてデリケートな状況にある。
とりわけアメリカの株式市場は過熱気味で、金融引き締めとのバランスは心もとない。パニックに陥った投資家がイタリア国債を売り払い、より安全な資産であるドイツ国債や米国債に資金を逃避させやすい状況にある。それはユーロ圏にモラル上のリスクを引き起こす。
――ギリシャ財政危機よりも影響は大きいということか。
レベルが全く違う。これは3兆ドルの債務問題で、3000億ドルではない。現在のヨーロッパの救済メカニズムは、全面的なイタリア危機に対処できるほどのものではない。唯一問題を解決できるのは、マリオ・ドラギECB総裁が「いかなる手段を講じてでも」危機を回避すると決意表明をするとともに、ECBがイタリア国債を買い続けることだ。
もちろんECBも、EU経済全体の状況を幅広く検討して、場合によっては、国債買い付けの規模を縮小するとしている。それでも、カギを握るのがECBであることに変わりはない。財政調整やユーロ圏の構造改革などいろいろなことが言われるが、実際に市場がパニックに陥れば、短期間で市場を安定化できるのは中央銀行だけだ。
当然ながら、それはユーロ圏に政治的問題を引き起こす。ドイツの極右政党「ドイツのため_の選択肢(AfD)」を伸長させたのは、15年の難民危機ではなく、アンゲラ・メルケル首相のユーロ危機への対応の不満だ。保守派は強硬な措置を求めている。メルケル率いる与党・キリスト教民主同盟(CDU)が今、何としてでも避けたいのは、ECBがイタリアを救済するために緊急措置を講じることだ。
――予算規律の維持に失敗し、ドイツが圧倒的地位を築いて他の国々に緊縮を強いるなど、ユーロ圏というコンセプト自体が崩れつつあるのか。
実のところイタリアは、20年前から緊縮政策を取っている。これはドイツよりも長い。イタリアの問題は、70年代、80年代、そして90年代初めに積み上げた莫大な政府債務だ。財政赤字自体は控えめだ。しかし現政権がそれを少しばかり増やそうとすれば、EUの財政ルールに違反することになってしまう。
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