安倍首相は「三つの原則」と言っていなかった──日本の代表カメラの収録から
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月17日 20時20分
以上が、日本の代表カメラが収録した、安倍首相の生の声である。
国会答弁にある「三つの原則」という言葉は、ここにはない。
つまり、安倍首相は李・習両首脳との会談で「三つの原則」とは言っていないことが明らかとなったわけだ。
「(注)」に関する説明
しかし、安倍首相が主張しているとされる「三つの原則」の具体的内容に関しては触れている。しかも、ほぼ同じ言葉を使っていることが見て取れる。李・習両首脳との会談を対比してみていただきたい。ほぼ
1.(注1)=(注5):競争から協調
2.(注2)=(注6):脅威とならない
3.(注4)=(注8):自由で公正な貿易体制
4.(注3)=(注7):第四の文書を再確認
となっている。この「1、2、3」を、安倍首相は「三つの原則」と「心の中で!」名付けて発言し、「口に出して」言った「つもり」になっていたのだろう。
ここで注目しなければならないのは、上記の「1」も「2」も、既に中国が常に「日本は遵守せよ」と上から目線で言うところの「四つの政治文書の原則」(1番目:1972年、2番目:1978年、3番目:1998年、4番目:2008年)の中に、書きこまれていることである。少しも新しいことではない。その証拠をお見せしよう。
●「1」に関して。これは以下の政治文書の中に出てくる。
1998年:「双方は(中略)協調と協力を強化し」
2008年:「双方は(中略)協調と協力を強化していくことで一致する」
●「2」に関して。これは以下の政治文書に出てくる。
1972年:「両政府は(中略)威嚇に訴えない」(中国語では「脅威」は「威嚇」)
1978年:「両締約国は(中略)威嚇に訴えないことを確認する」
2008年:「双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した。」←今般の安倍発言と、前後の文脈まで、ほぼ同じ。
●「3」に関して。
これは「四つの政治文書」にはないが、早くもトランプ氏が大統領に当選して以来、習近平が盛んに言い始めた言葉である。たとえば2107年1月15日の中国共産党新聞網にある「習近平、経済のグローバル化に関して語る」をご覧いただきたい。「公正」「公平」「自由」「貿易」などの言葉が無数にある。米中貿易問題発生以降は、3日に一度は「自由で公正公平で開かれた貿易体制」という言葉を発し続けていると言っても過言ではないほど、習近平はトランプに対抗して言いまくっている。
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