安倍首相は「三つの原則」と言っていなかった──日本の代表カメラの収録から
ニューズウィーク日本版 / 2018年11月17日 20時20分
したがって、安倍首相も同様のことを言っているのであって、目新しいものではないし、また中国が反対するわけもないのである。他は拘束力のある「四つの政治文書」に書かれている内容なので、もちろん中国側は否定しない。
ただ安倍首相が「三つの原則」と発言していない以上、中国側がそれを認識することはあり得ないし、また確認し合う事態にも至るはずがない。
「第四の文書」とは何か?
問題は、上記の「4」である。
安倍首相が言っている「第四の文書」の意味が最初は理解できなかった。「四」という数字があるなら、一般的には「四つの政治文書」を連想する。事実、中国側は翻訳に困ったのだろう、「第四の文書」を、すべて「四つの政治文書」と翻訳している。
習近平との会談に関しては、11月14日付のコラム<安倍首相、日中「三原則」発言のくい違いと中国側が公表した発言記録>にリンク先を示した通りで、李克強との会談に関しては10月26日付の国務院の「中国政府網」に書いてある。ここでも「四つの政治文書」と翻訳されている。
しかし安倍首相たるものが、「四つの政治文書」を「第四の文書」と勘違いする訳がないだろう。おまけに李・習両首脳との会談で同じ言葉を使っているということは、安倍首相はよほど「第四の文書」にこだわっているものと推測した。
そこで、ハッとした。
安倍首相はひょっとしたら、「四つの政治文書」の「四番目の文書」を指しているのではないか。だとすれば2008年5月7日に公表した「胡錦濤・福田」会談で出した共同声明だ。もちろん署名入りの正式文書である。PDFをダウンロードする作業を省けば、たとえば日本語で書かれた「チャイナ・ネット」の「四つの政治文書」で見ることができる。
これをご覧いただければ分かるように、そこには、「四」の冒頭に「四 双方は、互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならないことを確認した」とある。また「五の(4)アジア太平洋への貢献」には「双方は、中日両国がアジア太平洋の重要な国として、この地域の諸問題において、緊密な意思疎通を維持し、協調と協力を強化していくことで一致するとともに、以下のような協力を重点的に展開することを決定した」と断定的に書いてある。これは拘束力のある「原則」なのである。
ということは、安倍首相は李・習両首脳との会談において、あくまでも「四つの政治文書」のうちの「四番目に書いてある原則」を李・習両首脳と確認したのであって、一切、「三つの原則」に関しては触れてもいないし、「確認し合ってもいない」ということが結論される。
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