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ロシア「帝国復活」プーチンの手腕

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月7日 17時0分

今回の選挙結果は「管理民主主義」というゲームにおけるプーチンの手腕の試金石だった。今後も彼がこのゲームから降りることはないだろう。彼のビジョンは第1に「(多層的な対策で相手の攻撃を遅らせる)縦深防御」だと、元米国務副長官のジェームズ・スタインバーグは言う。「第2は欧米を混乱させ、火消しに奔走させる」ことだ。



エルツォフによれば、「ロシア政府や軍の究極の目標はアメリカやNATOの影響を少なくとも可能な限りそぐことだ。それには緩衝地帯を支配する必要があるが、トランプの掲げるアメリカ第一主義のおかげで、この作戦を遂行しやすくなった」。

エルツォフのみるところ、ロシアは緩衝地帯を重要度によって4層に分類している。第1層はウクライナ、ベラルーシとカザフスタンの大部分。これはノーベル賞作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンによる「ロシアの大地」の定義に合致する(ソ連時代のソルジェニーツィンは反体制派だったが、後にプーチンの熱烈な支持者となった)。第2層はカフカス(ロシア南東地域、アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア)、第3層はソルジェニーツィンが「ロシアの弱点」と呼んだ中央アジア(キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)だ。

プーチンの影響力は既にこれらの国の大半と、(間接的な形で)旧ソ連圏のハンガリーとポーランドに及んでいる。だが欧米にとって深刻な局面となるのは、プーチンが第4層の地域であるバルト3国(ラトビア、リトアニア、エストニア)に触手を伸ばしたときだろう。バルト3国はNATO加盟国だが、ロシア系の住民が多い。「問題は加盟国がどんな攻撃を受けた場合にNATO条約第5条の定める集団的自衛権が行使されるか」だとエルツォフは言う。「ロシア系住民が圧倒的に多い地域で、ロシア系が武装蜂起したとして、そのときアメリカは反撃に出るだろうか」

From Foreign Policy Magazine

<本誌2018年12月11日号掲載>



※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。


マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)


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