【地球温暖化時計】「1.5度」までのカウントダウン
ニューズウィーク日本版 / 2018年12月17日 18時30分
カウントダウンはどれほど正確か?
残り時間を多く見積もり過ぎていないと自信を持って言えるよう、カーボンバジェットに関するもっと厳しい推計値を使うこともできた。例えばカーボンバジェットの残りを7700億トンではなく5700億トンだと考えると、1.5度越えは4年早まって2030年になる。言い換えれば、残り時間を多く見積もり過ぎていない確率は50%から67%に高まる。
地球の気温をどうやって定義するかによっても、残り時間は左右される。われわれが採用したのは世界気象機関(WMO)の定義に基づく地球の気温だ。その算出方法は観測に空白域があり、陸上と海洋上の大気温度の両方を合わせることで地表面温度を推定する。もしわれわれが、陸上の大気温度のみに基づき地球の全表面積をカバーする推定気温を採用すれば──それには「気候モデル」もしくは既存の気温データ群をもとに未知の気温を予測する「内挿」のいずれかの手段が必要になってくる──残された炭素予算は7700億トンから5800億トンへと縮小し、気温上昇が1.5度に達するまでの残り時間が4年早まる。
時間を遅らせる方法は?
おそらく最も重要で不確かな問題は、CO2や温暖化ガス排出量の削減に世界がどれほど真剣に取り組むかだ。当然、もし化石燃料の消費拡大でCO2排出量が増え続ければ、現在から1.5度上昇まで残された時間は減る一方だ。もし森林伐採やメタンガスの排出を加速させても同様の結果になる。
現在、各国が定めた温室効果ガス削減目標は、気温上昇を1.5度に抑えるには不十分だ。もし全ての国が2030年までの目標を達成しても、1.5度上昇までの残り時間は半年しか稼げない。同様に、CO2排出量を現在と同じレベルに抑えても、わずか14カ月の時間稼ぎにしかならない。
もし2080年までにCO2排出量をゼロにすれば、気温上昇を2度未満に抑えられるかもしれないが、それでも2040年までに1.5度は上昇するだろう。1.5度未満に抑えるには、化石燃料によるCO2の排出量と森林伐採を2050年までにゼロにする必要がある。
1.5度以上の気温上昇による衝撃を避けるためには、個人やビジネス、政府が互いに協力し、あらゆるレベルの意思決定において温暖化対策を優先させなければならない。温暖化による最も危険な結末を避けるために十分な時間を稼ぐには、人類が大胆かつ野心的な行動を取るしかない。
途方もない挑戦だし、成功しないかもしれない。だがこれまでよりはるかに頑張らなければ、失敗は目に見えている。
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