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宇宙の95%は負の質量をもつ「暗黒流体」だった?

ニューズウィーク日本版 / 2018年12月20日 16時53分



銀河の高速回転の謎を解く

さらに私は、3Dのコンピューターモデルでシミュレーションを行い、この仮説で暗黒物質の物理的な性質を説明できるか確かめた。暗黒物質は、現在のモデルで予測されるよりもはるかに速く、銀河が回転していることを説明するために導入された概念だ。高速で回転している銀河内の物質がばらばらに飛び散らないためには、観測不可能な謎の物質の存在を仮定しなければならない。

私のモデルは、暗黒流体が周囲に及ぼす斥力により、銀河の分散が回避されることを示している。銀河内の正の質量をもつ物質の重力は、あらゆる方向から負の質量をもつ暗黒流体を引き寄せる。暗黒流体が銀河に引き寄せられれば、その強大な斥力により、銀河内の星々は飛び散ることなく高速で回転するようになる。マイナスの符号を挿入するだけで、まるでマジックのように物理学者を長年悩ませてきた謎が解ける、というわけだ。

負の質量なんてあり得ない、と主張する人もいるだろう。確かに奇妙なアイデアだが、実はそれほど突飛な概念ではない。私たちは正の質量をもつ物質の世界にいるから、イメージしにくいだけだ。

弦理論を裏付ける

物理的に存在するか否かはともかく、実に多くの領域で、負の質量は理論的に欠かせぬ概念となっている。水中の気泡の振る舞いは、負の質量を想定することでモデル化できる。負の質量をもつような振る舞いをする粒子の生成に成功したという実験も報告されている。

物理学では既に負のエネルギー密度という概念は受け入れられている。量子力学によれば、真空には絶えず揺らぐ場のエネルギーがあり(それは時には負のエネルギーともなり)、そこでは波が生まれ、仮想粒子が生まれたり消えたりしている。その際に生じる小さな力は実験で検出可能だ。

暗黒流体を想定することで、現代物理学の多くの難問を解決できそうだ。例えば量子論とアインシュタインの宇宙論を統合する理論として最も有望な弦理論は、今のところ観測された事実と合致しないとみなされている。しかし弦理論は、何もない空間に負のエネルギーがあることを示唆しており、それが負の質量をもつ暗黒流体だと仮定すれば、理論と観測データの矛盾は解消する。

また宇宙の加速膨張という画期的な発見をしたチームも、負の質量を示唆する驚くべき観測データを得ている。しかし彼らは「物理学に反する」と考えて、このデータの解釈には慎重な姿勢をとった。

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