【EU離脱】一人ぼっちになったイギリスを待つ悪夢
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月16日 17時55分
「新たな国民投票の効果については、かなり疑わしい」とジェームズは言う。 「もう一度やったら、またもう一度、さらにもう一度とならないだろうか?」
ここで学ぶべき重要な教訓は、EUのような巨大な貿易圏から立ち去ることは、不可能ではないにしても非常に難しいということだ。イギリスと大陸ヨーロッパは愛と憎しみの入り混じった複雑な関係にあり、要するに結婚と離婚を繰り返したエリザベス・テイラーとリチャード・バートンのようなものだ、とジェームズは冗談めいて言う。
「地理的な状況は変えることができない。イギリスはフランスからわずか数キロのところにある」と、ペンシルベニア大学ウォートンビジネススクールの貿易専門家、マウロ・ギレンはいう。「過去50年の間、イギリスはヨーロッパと近い関係にあった。そしてヨーロッパは世界最大の市場だ」
WTO(世界貿易機関)加盟国として、イギリスは他のWTO加盟国とオープン貿易体制を維持する必要がある。それでも、銀行や航空会社などのイギリスの主要産業が将来も現在の強さと世界中へのアクセスを維持できるかどうかは、疑問視されているとギレンは言う。たとえば、ヨーロッパ系ではないイージージェットのような航空会社は、ヨーロッパ全域への就航を続けるために慌てて許可をとろうとしている。
反EU派にとっての警告
結局のところ、自ら招いた悪夢に直面するイギリスの姿は、欧州内の反EU派に対する警告となるだろう。
「今、イギリスはEUの内部からの改革に批判的な人々を後押しようとするだろう」とジェームズは言い、イタリアの極右政党を率いるマッテオ・サルヴィー副首相がポーランドのEU懐疑派で保守系与党のヤロスワフ・カチンスキ党首に接近、EU内で懐疑派の同盟を結ぼうとしたことを指摘した。
「どちらの側も、ノーというだろう。イギリスの二の舞になるようなことはしないほうがいい」
(翻訳:栗原紀子)
マイケル・ハーシュ、キース・ジョンソン
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