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中学受験は子どものため? それとも親のため?

ニューズウィーク日本版 / 2019年1月30日 13時15分

<東京23区の国立・私立中学の生徒は年々増え続け、比率が最も高い文京区では中学生全体の4割を超えている>

今年も受験のシーズンとなった。受験というと高校受験や大学受験が想起されるが、初めて受験を経験する年齢はどんどん下がっている。都市部では中学受験する子どもも多く、そのための専門塾が乱立している。

少子化にもかかわらず私立中学の生徒は増えており、2018年では約24万人で中学生全体の7.3%に相当する。東京都に限ると24.8%にもなる(文科省『学校基本調査』)。東京では、中学生の4人に1人が私立校の生徒だ。大都市では、早期受験がじわじわと広がっている。

「もっと多いのではないか」という印象を持たれるかもしれない。その通りで、都内の地域別に中学受験の率を計算すると、もっと偏った値が出てくる。都内23区別に国・私立中学進学率を出し、地図に落としてみると分かりやすい。手元に1980(昭和55)年のデータもあるので、最新のデータと並べて時代変化も分かるようにした。



およそ40年の間に、早期受験が浸透していることが分かる。1980年では20%を超えるのは2区だけだったが(千代田区、中央区)、2018年では17の区がこのラインを超え、11の区が3割以上となっている。最高は文京区の43.9%で、地元の小学生の4割以上が国・私立中学に進んでいることになる。これは実際に進学した生徒の率で、中学受験をした層になると裾野はもっと広がる。濃い色の区では、小学生の半分ほどが中学受験をするのではないかと思われる。



わが子に早期受験をさせる親の思惑は様々だ。質のよい教育を受けさせたい、エスカレーター校でのびのびと過ごさせたい、地元の荒れた公立校に行かせたくない......。中学受験地図と所得地図の模様はほぼ重なることから、富裕層の教育戦略として機能している面もあるだろう。

子どもを競走馬のように考えている親もいるが、早期受験は成長の途上にある児童の心身によからぬ影響を及ぼすこともあり得る。それを可視化するのは容易でないが、目が悪い子どもの率との相関関係は提示できる。<図2>をご覧いただきたい。縦軸の近視率とは、裸眼視力が0.3に満たない児童の割合をいう。



国・私立中学進学率が高い地域ほど、近視の率が高い傾向がみられる。先ほど触れた文京区では、受験を控えた小6児童の4人に1人が近視だ。夜遅くの電車内で、塾帰りと思しき小学生が食い入るように参考書を読んでいる姿を見たことがあるが、そんな生活を続けていれば視力は落ちるだろう。

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