イギリスが出て行ってもEUの課題はそのまま
ニューズウィーク日本版 / 2019年1月31日 18時0分
イギリスとフランスを別にすれは、EUの大型国が国防にかける予算はあまりにも少ない。今でこそ、その金額はわずかに増えているが、新たな不況にでも見舞われれば再び削減に転じる可能性は高い。資金をプールして軍需品を共同で調達すればコスト削減にはなるが、リソースそのものを拡大する必要性はなくならない。
ブレグジットが実現しても、EUは内向きの保護主義的機関になるわけでも、「ヨーロッパ合衆国」に向けてまっしぐらに進むわけでもない。EUの経済は縮小するが、保護主義にはならない(少なくともブレグジットの結果そうなるわけではない)。EUの統合も進むわけではないだろう。
EU統合推進派にとって、イギリスは都合のいいスケープゴートだった。そのイギリスがいなくなれば、緊急に対策を講じるべき本当に重要な問題が見えてくるに違いない。
From Foreign Policy Magazine
<本誌2018年02月05日号掲載>
※2019年2月5日号(1月29日発売)は「米中激突:テクノナショナリズムの脅威」特集。技術力でアメリカを凌駕する中国にトランプは関税で対抗するが、それは誤りではないか。貿易から軍事へと拡大する米中新冷戦の勝者は――。米中激突の深層を読み解く。
サイモン・ティルフォード(トニー・ブレア研究所チーフエコノミスト)
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