ベネズエラ国民のためにトランプ政権が今すべきこと
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月8日 16時30分
近年は石油生産も製油能力も落ち込んでいるとはいえ、ベネズエラは指折りの産油国だ。原油確認埋蔵量は世界一の3030億バレル強。ベネズエラ石油公社(PDVSA)の日産量は120万バレルに激減しているが、エネルギー市場での存在感は大きい。
驚くことに、PDVSAは石油製品分野におけるアメリカの主要なパートナーでもある。年間150億ドル規模に上る両国の2国間貿易のうち、大部分を占めるのが石油だ。
経済危機のせいで、ベネズエラは自国の原油を国内で精製することができず、「帝国主義者のヤンキー」から軽油やガソリンを輸入するしかない。一方、アメリカの旧来の製油所は国内のシェール層にある軽質スイート原油を精製できないため、重質原油が必須だ。
昨年のアメリカの対ベネズエラ輸入総額は110億ドル。その大半を占めたのが重質原油で、輸入量は1日当たり50万バレルに上った。キーストーンXLパイプライン建設計画の却下によってカナダから原油を大量輸入する道が閉ざされた今、近隣国で残る選択肢はほぼベネズエラだけだ。ベネズエラのエネルギー部門への制裁が必要な状況とはいえ、実行に踏み切ればアメリカも無傷ではいられない。
派兵だけは避けるべき
ベネズエラで大きな地政学的・経済的利権を維持するロシアは、権益を守るために行動を起こす可能性が高い。中南米諸国をはじめ、国際社会がアメリカと共にグアイドを暫定大統領として承認する意向を示す一方で、ロシア政府高官はアメリカのグアイド支持を「クーデター同様」だと非難している。
建前はともかく、ロシアとベネズエラには強い経済関係がある。ロシアは16~17年、ベネズエラに170億ドル以上を融資(中国の対ベネズエラ投資額は計560億ドル)。ロシアの政府系石油会社ロスネフチはPDVSAにとって最大の投資家だ。
両国は緊密な外交関係も結んでいる。ロシアにとってその価値は大きい。ベネズエラは親ロの南オセチア独立を承認した数少ない主要国であり、ロシアによるクリミア併合も認めている。しかも大量の原油を有するとあって、ロシアにとってキューバよりはるかに重要な国だ。
翌日には首都カラカスでグアイド支持者がマドゥロに抗議した MIRAFLORES PALACE-REUTERS
では、ロシア政府は友人マドゥロのために何ができるのか。中南米で直接的な軍事介入を行うことはないだろうが、キューバを通じた介入や武器売却、安全保障援助はあり得る。
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