ベネズエラ国民のためにトランプ政権が今すべきこと
ニューズウィーク日本版 / 2019年2月8日 16時30分
もっともロシアはアメリカへの対抗措置として、カリブ海まで艦船を派遣する必要などない。ウクライナ情勢を悪化させたり、大規模サイバー攻撃を仕掛けたり、ベネズエラへのキューバ軍部隊の輸送を担うだけで十分だ。
ベラルーシ情勢への波及も気掛かりだ。同国とロシアの隣国関係は今や史上最悪。ロシア側の最終目標はベラルーシの併合とみられる。ロシアのヨーロッパ方面への拡大もアメリカを揺さぶり、ベネズエラから目を背けさせる手段となる。
ロシアの圧力があろうと、アメリカはベネズエラ国民の味方であり続けなければならない。ただし、通常部隊の派遣だけは回避すべきだ。米軍を送り込めば、マドゥロが唱える帝国主義者の陰謀論の証拠とされ、野党勢力の正当性を徹底的に損なうことになるかもしれない。
トランプ政権は世界各地で米軍撤退を決めているが、中南米の国を親ロ派(または親中派)に譲り渡すまねは許されない。メキシコを除けば、中南米の政治は急進左派からの揺り戻し期にあるようだ。アメリカは迅速に、決断力を持って賢く行動する必要がある。今を逃せば、ベネズエラ国民が正義を手にする機会は当分訪れないかもしれないのだから。
<本誌2019年02月12日号掲載>
※2019年2月12日号(2月5日発売)は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集。なぜもめている? 結局どうなる? 分かりにくさばかりが増すブレグジットを超解説。暗雲漂うブレグジットの3つのシナリオとは? 焦点となっている「バックストップ」とは何か。交渉の行く末はどうなるのか。
アリエル・コーエン(アトランティック・カウンシル上級研究員)
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