1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

女性監督のスリラー映画がいま面白い!

ニューズウィーク日本版 / 2019年2月19日 19時0分

そんなジューソンが子供心に感動したのは、リュック・ベッソン監督の『ニキータ』(90年)だったという。アンヌ・パリロー演じる主人公のニキータには、「ボンド映画の女性キャラクターには決して見ることのできない感情が満ちあふれていた。『これだ!』と思った」。

『クロース』の主人公サムを演じるのは、『ミレニアム/ドラゴン・タトゥーの女』シリーズのスウェーデン版映画化作品で主人公リスベット・サランデルを演じたノオミ・ラパスだ。『ミレニアム』も暴力シーンが多かったが、『クロース』でもサムが心身共に痛めつけられるシーンが多い。

「いくらアクション映画でも、女性が顔面パンチを食らって血まみれになるシーンはあまりないと思う。重要なのは、アクションシーンがその人物の感情とつながっていること。感情がアクションを引き起こすのであって、その逆ではない」と、ジューソンは語る。



映画の中で女性が殴ったり殴られたりすると、猛烈な非難が起きることがある。ビアもジョン・ル・カレのスパイ小説『ナイト・マネジャー』をドラマ化したとき、女性の拷問シーンを入れて批判を浴びた。

男性が拷問を受けるシーンなら多くの映画にあふれているから、完全なダブルスタンダードだが、無理もないのかもしれない。映画界では1世紀以上にわたり、男性の監督と脚本家が、映画における女性の描かれ方を定義してきたのだ。

『クロース』の演出をするジューソン Saeed Adyani/NETFLIX

『007』を女性が撮る日

『バード・ボックス』は、原作の映画化が本格的に決まるまで3年以上を要した。それは伝統的な映画会社が、主人公マロリーのキャラクターをいまひとつ理解できなかったからだ。

『クロース』の売り込みに奔走したジューソンも同じような思いをした。『エイリアン』や『キル・ビル』など女性を主人公にして興行的にも成功した映画はあるのに、「『女性映画』は売れないとか、『君のキャリアのプラスにならないよ』と何度も言われた」と言う。

『クロース』が日の目を見たのは、イギリスのウェストエンド・フィルムの女性映画部門ウィラブと、ネットフリックスが手を上げてくれたおかげだ。『ミレニアム』シリーズで国際的な知名度を得たラパスが出演を決めたことも大きかった。

『クロース』が『バード・ボックス』並みのヒットになるかどうかは、まだ分からない。ただ、映画評論家たちの批評がさほど重要ではないのは間違いない。『バード・ボックス』も専門家の評判はそこそこだったが、フタを開けてみれば社会現象的なヒットになった。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください