空から実用化が進む世界の無人兵器事情:ボーイングやカラシニコフも
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月7日 18時20分
最大の動機はコスト削減か
ATS開発の背景には、まず、人命尊重の観点が挙げられる。ボーイングの研究開発部門ファントム・ワークス・インターナショナルのディレクター、シェーン・アーノット氏は、無人機自体の能力の高さもさることながら、戦闘機の編隊を無人機によって"水増し"することにより、リスクを分散できるという考えを示している。同氏は、「有人機が撃たれるよりは、無人機が撃たれる方がましだ」と語る(ロイター)。
また、無人機であれば人間のパイロットよりも強いGに耐えられるし、連続飛行時間も長く取れる。一度により多くの情報を処理することもできるだろう。臨機応変な判断や柔軟性など、まだ人間に分がある面も多く残されているだろうが、AI技術が進めば、無人機の方が人間よりも優秀な兵士となる日が来るかもしれない。
とはいえ、現状では、リスク回避や性能面以上に、コスト削減が無人機開発の大きな動機になっていると言えよう。米シンクタンク、ミッチェル航空宇宙研究所は昨年、有人機と無人機を組み合わせることで、米軍機の数量不足を補うべきだという提言をしている。ATS1機あたりの価格・運用コストは不明だが、人件費も含めれば、F-35といった高価な第5世代機よりはかなり割安になると見られる。
新興勢力が運用する「自爆ドローン」
遠隔操作による無人航空機(ドローン)は、既に今世紀初頭から対地攻撃、偵察任務に実戦運用されている。米軍がイラク戦争やアフガン戦争で使用したRQ-1プレデターやRQ-4グローバルホークが有名だ。
これらの大型の機体は高価で、衛星通信サイトなどの設備も必要なことから、使用国は今の所アメリカなどの超大国に限られる。
一方、近年小国や中東の武装勢力によって運用されているのが、通称「自爆ドローン」または「カミカゼ・ドローン」と呼ばれるミサイルサイズの「徘徊型兵器」だ。映像でつながったオペレーターの操縦により、敵軍事施設や要人といった目標を見つけるまで敵地上空を何時間も旋回してチャンスを伺うことができる。技術的には、事前にプログラミングすれば自立攻撃も可能だ。単価が安く、目標を発見できなかった場合は無傷で帰投できるため、懐にも優しい。
現在、この自爆ドローンのシェアをほぼ独占しているのはイスラエルで、中国などにも輸出している。イエメンのフーシー派武装勢力も独自開発の自爆ドローンの使用実績がある。ここに来て、ロシアでも先月、AK-47アサルトライフルで有名なカラシニコフ社が超小型自爆ドローンを発表。イスラエルもこれに近い新型ドローンで対抗している。アメリカ、中国も独自開発中だ。今や無人航空機の開発競争は、世界に広がっている。
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