全人代「GDP成長率」を読み解く
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月8日 13時54分
太い曲線の「青、赤、緑」は、それぞれ「米中日のGDP規模」を表し、「・」や小さな「■」等を用いて表した折れ線グラフ(線を少し細くして区別)は、同じく色別に米中日のGDP成長率を示す。規模の値は左縦軸に示し、「%」は右側の縦軸に示してある。
まず「赤い太線」すなわち中国のGDP規模の変化をご覧いただきたい。
北京オリンピックがあった辺りから急激に規模が増大し、「2010年」には日本(緑色の太線)を凌駕している。赤い太線と緑の太線が「2010年」で交差しているのが見て取れる。この時点から中国は世界第二の経済大国になり始めた。
一方、赤の「・」でプロットした「細い赤線の折れ線グラフ」をご覧いただこう。まさに、日本を追い抜いたこの「2010年」から、GDP成長率(経済成長率)は減少し始めているのである。
「経済規模が大きくなったために成長率が減少する」という現象が歴然と見て取れる。
日本の一部の中国研究者が「中国はもう明日にも経済崩壊する」と言い続けてきて20年以上経つが、まだ崩壊していない。「中国経済崩壊は目前だ」と叫んでは日本人を喜ばせている日本の中国研究者は、逆に「日本」の足元を見つめたことがあるだろうか。
緑色の太線を見ても、細い折れ線を見ても、緑(日本)の経済指標の基本データは、見るも哀れではないか。規模も低迷していれば、成長率に至っては「マイナス」の時期さえ少なくない。
それでも日本経済は崩壊していない。債務の話まですると変数が多すぎて分析が複雑になり、まるで経済の授業のようになるので、ここでは取り敢えずGDPの規模と成長率だけに焦点を当てる。
アメリカはさすがに規模も圧倒的に大きい。しかし成長率は日本と大差ないところを揺らいでいる。
注意すべきは青い太線のカーブと赤い太線のカーブの違いだ。
2016年辺りから、「危険なシグナル」が出始めている。このカーブの曲率を延長していくと、(2025年~)2030年辺りには中国のGDP規模(赤い太線)がアメリカのGDP規模(青い太線)を追い抜くだろうと、IMFなど多くの経済金融関係のシンクタンクが予測している。
日本は中国のGDP成長率に異様なほど強い関心を持ち、「ほら低くなった!6.6%など、リーマンショック級の低水準で、中国はもう間もなく亡ぶ!」と大喜びしているが、このグラフから見る限り、少なくとも「GDP成長率」だけで一喜一憂するのは、必ずしも正しくないことを納得していただけただろうか。
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