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全人代「GDP成長率」を読み解く

ニューズウィーク日本版 / 2019年3月8日 13時54分

読売新聞の一部誤報

筆者は3月5日の日本テレビBS「深層ニュース」に出させていただき、甘利明氏(元経済再生担当大臣)と全人代と米中ハイテク戦争に関して討論したが、番組の中で中国の経済成長率に関して上述の説明を試みた。このとき言いたかったのは「中国のGDP成長率が落ちたからと言って喜んでいるわけにはいかない。真相を見て用心しなければならない」という趣旨のことを述べたはずなのだが、その日の深夜(3/5(火) 23:39配信)の読売新聞は<[深層NEWS]中国の成長率下がっても「警戒する必要ない」>というタイトルで速報を流し、筆者が「中国の成長率が下がるからといってすぐに警戒する必要はない」と述べたと報道している。報道してくださるのは非常にありがたいと感謝しているが、真逆の表現を用いるのは、読者に間違ったシグナルを発信することになるので、好ましくないだろう。筆者は「警戒」という言葉は使っていないが、もし「警戒」という言葉を使うなら、筆者が言いたいのは「警戒する必要はない」ではなく、逆に「警戒しなくてはならない」ということである。この機会に訂正させていただき、誤解を解きたいと思う。

なお、筆者の基本的スタンスは、「言論弾圧をする国が世界を制覇するような事態になってはならない」ということであり、「 日本がその中国の覇権に力を貸すようなことはしてはならない」と主張しているのである。そのために中国の真相を見ようではないかと言っているのだ。

中国、GDPは「量より質」――研究開発に傾注する新常態

2015年の全人代以降、盛んに言われたのは「新常態(ニューノーマル)」である。つまり中国はそれまでのGDPの量的成長を抑え、質の向上に転換していくとした。「量から質への転換」を行なえば、当然、GDPの規模の増加率(GDP成長率)は鈍る。

なぜ「量から質への変換」をする必要があるかというと、それは2015年5月に「中国製造2025」という国家戦略を発布したからだ。これは2025年までに半導体の70%を自給自足にし、宇宙開発においてアメリカを凌駕するというハイテク戦略だが、それを達成するためには研究開発に多くの国家予算を注がなければならない。その分だけ、GDPの量的成長は抑えられる。

中国は今「中進国の罠」に陥っている。そこから抜け出すには民主化するか、ハイテクに重点を置きイノベーションで勝ち抜く以外にない。中国は民主化などは絶対に許さない。中国共産党は一党支配体制を死守することしか考えていない。だから習近平政権は「中国製造2025」に国運を賭けている。トランプ大統領は、それを阻止しようと懸命だ。

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