日本の子どもの自殺率が2010年以降、急上昇している
ニューズウィーク日本版 / 2019年3月13日 16時0分
<スマホ普及の時期と重なる10代前半の自殺率の際立つ上昇。ネット、SNS上のパトロール、相談体制の強化が求められている>
景気回復と自殺対策の成果があってか、国民全体の自殺者数は減少傾向にある。2000年の年間自殺者数は3万251人と3万人を超えていたが、2017年には2万465人と大きく減った(厚労省『人口動態統計』)。この間に自殺者は3分の2に減少したことになる。
しかし、子どもの場合はそうではない。思春期の10代前半を見ると、年によって凹凸はあるが、おおむね増加傾向にある。2016年の年間自殺者は71人だったが、2017年では100人と大幅に増えている。中学生の自殺が頻繁に報じられていることからも実感があるかもしれない。
ここ数年の観察だけでは状況判断を誤るので、戦後初期からの長期推移を描いてみる。自殺者の実数よりも、当該年齢人口で割った自殺率のほうが正確だ。上述のように2017年の10代前半の自殺者は100人で、同年10月時点の当該年齢人口は543万2000人だ。よって人口100万人あたりの自殺者数にすると18.4人となる。この値を自殺率とする。
<図1>は、このやり方で出した子どもの自殺率の推移だ。年による凹凸が激しいので、3年次の移動平均(当該年と前後の2カ年の平均値)の曲線も添えた。こうすることで、大局的な推移も読み取りやすくなる。
青色の自殺率の実値をみると、凹凸しながらも上昇傾向で、最新の2017年の数値が最も高くなっている。子どもの自殺率は戦後最高だ。赤色の移動平均から、凹凸を排した滑らかな傾向を見て取れるが、2010年以降の上昇が際立っている。スマホの普及期と重なっていることが分かる。
ネットいじめ、自殺勧誘サイト......思い当たる事象は数多くある。自我が未熟な青少年には、情報化社会の影の部分が直接、投影される。ネットパトロールの強化やSNSを通じた相談体制の強化、といった対策が求められる。自殺対策の中身は年齢層によって異なるが、その対象は中高年の世代から子ども・若者へと重点を移す時に来ている。
子どもの自殺の心理として、「苦しみが永遠に続くという思い込み」「心理的視野狭窄(自殺以外の解決手段が浮かばなくなる)」というものがある(文科省『教師が知っておきたい子どもの自殺予防マニュアル』2009年)。こうした認知の歪みを是正する必要がある。
それでは、子どもの自殺動機にはどのようなものが多いのか。いじめを苦にした自殺が多いと思われるかもしれないが、データで見るとそうではない。過去5年間の小・中学生の自殺動機を示すと、<表1>のようになる。延べ数467件の内訳だ。
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